近年、自治体職員の大量退職が社会問題となりつつあります。
特に若手職員を中心とした“早期離職”が相次ぎ、**「もう今まで当たり前にできていた住民対応がこなせない」**という事態に陥っている区役所も少なくありません。
その背景には、「希望職とのミスマッチング」という、構造的な問題が存在しています。
■ 実例:23区内某区役所で起きた“4人中3人退職”の窓口崩壊
東京都内のある区役所では、2024年度に配属された新人4人のうち、わずか半年で3人が退職。その結果、住民票やマイナンバーなどの発行手続きで、1時間以上の待ち時間が発生するようになりました。
「自分は福祉の仕事がしたくて公務員試験を受けたのに、配属されたのは税務課。数字と怒鳴られるクレーム対応の日々で、心が折れました」
― 退職した元職員(22歳)
■ “希望と現実のギャップ”が若手を追い詰める
採用時に「区民に寄り添う仕事ができる」と思っていた若者が、実際は事務処理・苦情対応・数字とのにらめっこの日々。
しかも、部署移動の希望が通るのは3~5年後というのが一般的。
この配属の不透明さ・希望が反映されない人事制度が若者の離職を加速させています。
「自分の希望や適性がまったく考慮されないと感じた。これでは“やりがい”を感じる前に心が折れる」
― 区役所を辞めた女性(24歳)
■ 大量退職の影響:「当たり前の行政サービス」が機能不全に
人手不足によって、住民サービスにも影響が出ています。
- 窓口の受付時間短縮(15時で終了)
- 手続きの遅延(住民票・印鑑登録が即日発行できない)
- 問い合わせへの電話応答率の低下(繋がらない区役所)
さらに内部では、残った職員の負担が爆発的に増加。
→ 結果的に、**2次離職(ドミノ退職)**が発生する悪循環に。
■ なぜミスマッチが起こるのか?
- 人事配置が“機械的”すぎる
→ 試験成績だけで配属を決め、本人の適性や希望を無視 - 民間とのギャップ
→ 働き方改革が進まない自治体では、若者が「こんなに非効率なの?」とショックを受けやすい - “潰れないから”辞めないと思われている
→ 公務員は安定しているから辞めないだろう、という幻想が残っている
■ どうすれば現場は立て直せるか?
今後、区役所が崩壊を防ぐためには以下の対応が急務です。
- 新卒採用時に適性面談を必須化し、希望配属を重視する
- 定期的な異動面談を設け、キャリアの方向性を本人と共有する
- 若手向けのフォローアップ体制(メンター制度・精神面のサポート)
- 内部の業務改善(デジタル化・業務の標準化)による負荷軽減
■ おわりに:「公務員だから大丈夫」はもう通用しない
「公務員は安定だから安心」──そう言われてきた時代は終わりました。
今はむしろ、「理想と現実のギャップで燃え尽きる若者」が行政現場からどんどん去っているのが実情です。
住民サービスを守るためには、現場職員のモチベーションと働きやすさを守ることが、最優先事項であるべきではないでしょうか。
もう、“区役所は頼れば何とかなる”時代ではない。
今、私たち自身も、行政を支える側に立つ覚悟が求められているのかもしれません。