多くの人が得をする「円高」のほうがいい理由
■ そもそも「円安・円高」って何が違うの?
まず基本をおさらいすると…
- 円安:1ドル=150円 → 円の価値が低い状態
- 円高:1ドル=120円 → 円の価値が高い状態
1ドルのモノを買うのに、円安だと150円、円高なら120円で済みます。
つまり、
- 円安=輸入品が高くなる
- 円高=輸入品が安くなる
このシンプルな構図が、私たちの暮らしや経済全体に大きな影響を与えるのです。
■ 「円安」で儲かるのは誰か?
基本的に円安で得をするのは、一部の大企業や富裕層です。
① 輸出大企業
例:トヨタ、ソニー、マツダ、三菱電機 など
海外にモノを売るとき、円安だと円換算の利益が増えるため、業績が伸びやすいです。
▷ 実際の例
2022〜2023年、円安が進行すると同時にトヨタや日産の営業利益は数千億円単位で増加しました。
② 海外資産を多く持つ富裕層・投資家
米国株や外貨建て資産を多く持っている人は、為替差益で資産が増えます。
▷ 具体例
- 米国株に1万ドル投資 → 円安で1ドル=100円→150円に
→ 資産は100万円→150万円に増える
🟡 ただし、こうした恩恵を受けるのは一部の人に限られます。
■ 「円安」で損をする人が圧倒的に多い
円安で最も打撃を受けるのは、一般市民です。
① 生活必需品の値上げ
日本は食品・エネルギー・日用品などの多くを海外から輸入しています。円安が進むと、その輸入コストが上がり、私たちの生活費に直結します。
▷ 例:
- ガソリン:2021年→140円/L → 円安進行後180円超
- 小麦・大豆・食用油:原材料費高騰でパンやラーメンも値上げ
- 電気代:燃料費高騰で基本料金・燃料調整費が上昇
🧾 給料が増えない中で物価だけが上がる「悪い円安」と言われています。
■ 「円高」で得をするのは、実は“国民多数”
一方で、「円高」によるメリットは広く国民全体に行き渡るのが特徴です。
① 生活コストが下がる
輸入価格が下がり、家計が直接助かります。
▷ 例:
- 輸入食品の価格低下:牛肉・チーズ・果物など
- エネルギー価格:電気・ガス・ガソリンが安くなる
- 海外ブランド:iPhone、PC、化粧品などが値下がり
🟢 家計全体にゆとりが生まれ、実質賃金が上昇する効果も。
② 海外旅行・留学が安くなる
円の価値が高まれば、海外での支出が減り、海外旅行や留学のハードルが下がります。
▷ 例:
- ハワイ旅行:現地のホテルや食事が2〜3割安く感じられる
- 欧米大学への留学費用が数十万円単位で減少することも
🌍 教育や経験の選択肢が広がります。
③ 中小企業や地方経済にもプラス効果
原材料コストが下がれば、中小の飲食店や製造業の利益が改善されます。
▷ 例:
- 地元のうどん屋が小麦仕入れコスト削減 → 値上げを回避
- 地方工場が部品の輸入コスト減 → 利益改善 → 雇用維持
🟩 「大企業だけでなく、地域経済にも優しい」のが円高の強みです。
■ 円安は「トリクルダウン」しなかった
かつて「大企業が儲かれば給料が増え、庶民にも恩恵が及ぶ」と言われていました。これがいわゆる**“トリクルダウン理論”**です。
しかし現実はどうでしょう?
- 実質賃金は10年で下がり続け
- 円安が進んでも、中小企業の原材料コストは上がりっぱなし
- 結果的に、「一部の株主と経営者が潤っただけ」になってしまいました
📉 円安の恩恵が国民に広く行き渡ったとは言い難いのです。
■ 結論:「円高」のほうが“多くの人”にとってプラス
比較項目 | 円安 | 円高 |
---|---|---|
恩恵を受ける人 | 一部の輸出企業、富裕層 | 国民全体、生活者、地方経済 |
物価 | 上がる | 下がる |
実質賃金 | 下がる | 上がる可能性 |
海外旅行 | 高くつく | お得 |
地方・中小企業 | 厳しい | 楽になる |
▶ 最後に:求められるのは“円高に対応した経済政策”
もちろん、急激な円高も企業にとっては負担です。だからこそ、政府は…
- 為替安定のための金融政策
- 中小企業支援や価格転嫁の仕組み作り
- 実質賃金を押し上げる雇用改革
…といった構造的な改革を進めながら、円高の恩恵をしっかり活かすべきです。