こんにちは。今日は少し重たいテーマになりますが、いま多くの企業で深刻な課題となっている「適応障害による休職」について取り上げたいと思います。
適応障害とは?
適応障害とは、ストレスの強い環境や出来事にうまく対応できず、心や体に不調をきたす状態のこと。
症状としては、
- 強い不安感、落ち込み
- 急な涙、怒り、焦燥
- 睡眠障害、集中力の低下
- 出社困難、業務パフォーマンスの低下
などが挙げられます。
重要なのは、これは「甘え」ではなく、医学的な疾患であるという点です。
適応障害での休職、管理職に責任はあるのか?
結論から言えば、「すべてが管理職の責任」ではないが、無関係では決してない、というのが現実です。
その理由を、具体例を交えて見ていきましょう。
具体例①:高圧的な上司による指導
事例:20代の若手社員Aさん。仕事が遅いという理由で、上司が毎日のように「まだこんなこともできないの?」「本当に社会人か?」と厳しく叱責。
数ヶ月後、Aさんは出社が困難になり、精神科で「適応障害」と診断され休職に。
これは典型的な「指導の名を借りたパワハラ」。
管理職は部下を育てる立場ですが、「育成」と「萎縮させる叱責」はまったく別物です。
具体例②:業務過多とフォロー不足
事例:30代女性Bさん。産休明けの時短勤務にもかかわらず、通常フルタイムの業務を任され、誰もサポートしない状態。
「迷惑をかけたくない」という責任感から無理を重ね、ある日突然過呼吸に。適応障害で半年休職。
これは「業務設計の不備」に加え、管理職の目配り不足が原因です。
部下の状態を把握し、業務量を調整するのは上司の大事な役割です。
具体例③:チーム内の人間関係に放置対応
事例:同僚との折り合いが悪く、陰口や無視が続く中、上司に相談しても「大人なんだから自分で解決しなさい」と一蹴されたCさん。
徐々に心身が弱り、適応障害と診断され長期休職。
「人間関係の不和」も、立派なストレス要因です。
職場の人間関係の“火種”を見逃さないのも管理職の力量のひとつ。無関心や放置は、責任の放棄と言われても仕方ありません。
なぜ管理職の対応が重要なのか?
職場において、管理職は次のような重要なポジションにあります:
- 部下の業務量や能力、健康状態の把握
- パワハラ・セクハラなどのリスク管理
- 人間関係の摩擦の仲裁
- 働き方や制度利用への理解と柔軟な対応
これらが機能していなければ、誰でも“壊れて”しまうリスクがあるのです。
管理職が持つべき視点と姿勢
- 「結果」より「状態」を見る視点
パフォーマンスだけでなく、部下の様子や変化に目を向けましょう。 - 「聞く力」=傾聴力の強化
相談されるまで待たず、「最近どう?」と声をかける姿勢が大切です。 - 「仕事はシェアできるが、心の限界は人それぞれ」
同じ仕事でも、感じるストレスの大きさは人によって違うと理解すること。
管理職だけでなく、組織全体が変わる必要も
もちろん、管理職一人の努力だけでは限界もあります。
組織としても、以下のような取り組みが必要です:
- メンタルヘルス研修の定期実施
- 職場のハラスメント防止対策
- 相談窓口の設置と実効性の担保
- 「休むこと」への理解と制度整備
最後に ― 「心が壊れる職場」から「心が守られる職場」へ
人は、環境によって変わります。
優秀な人も、追い込まれれば崩れる。
メンタルの不調は決して「個人の弱さ」ではなく、職場の構造的問題である場合も多いのです。
管理職にとって大切なのは、成果を出させることだけでなく、部下の「働き続けられる土台」を守ること。
それができて初めて、真のリーダーと言えるのではないでしょうか。
あなたのチームから休職者が出たとき、それを「本人の問題」として片付けていませんか?
もしそうなら、もう一度チームを見渡してみましょう。
その人を追い詰めてしまったのは、「空気」かもしれません。そして、それを作っているのが、あなた自身かもしれません。