「巨大地震が起きたあと、さらにもう一度、もっと大きな地震が来るかもしれない」
そんな事態に備えるための仕組み、**「北海道・三陸沖後発地震注意情報」**をご存知でしょうか? 2022年12月から運用が始まったこの情報は、特に北海道から千葉県にかけての太平洋側にお住まいの方にとって、命に関わる重要な情報です。
今回は、この情報の意味と、実際にどのような地震発生パターンが想定されているのか、具体例を交えて解説します。
1. そもそも「北海道・三陸沖後発地震注意情報」とは?
一言でいうと、**「大きな地震(M7クラス)が起きた後、さらに巨大な地震(M8クラス以上)が続く可能性が高まった時に出る注意喚起」**です。
日本海溝・千島海溝沿い(東北から北海道の沖合)では、過去の統計上、大きな地震の後に「後発地震(あとから来る地震)」が発生する確率が、平常時よりも高まることがわかっています。
発出される条件
- 場所: 日本海溝・千島海溝沿いの想定震源域
- きっかけ: マグニチュード(M)7.0以上の地震が発生したとき
- タイミング: 地震発生から約2時間後(専門家の評価を経て発表)
私たちがすべきこと
この情報が出ても「すぐに避難!」というわけではありません。 「1週間程度、すぐに逃げられる準備をして生活する」 というのが正解です。
2. なぜこの情報が作られたのか?(3.11の教訓)
この仕組みが作られた最大の背景には、2011年の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)があります。
実は、あの巨大地震(M9.0)の2日前に、三陸沖でM7.3の地震が発生していました。 当時、多くの人が「これで地震は終わった」と思ってしまいましたが、実際にはそれが「前震(前触れの地震)」であり、その後に「本震」がやってきました。
「最初の地震で油断せず、次の巨大地震に備えてほしい」という願いが、この情報には込められています。
3. 【具体例】今後起こりうる「後発地震」のシナリオ
では、実際にどのようなパターンの地震発生が警戒されているのでしょうか。あくまで想定されるシナリオですが、具体的にイメージしてみましょう。
シナリオA:3.11型(前震 → 本震パターン)
これは東日本大震災と同じようなケースです。
- 【最初の地震】
- 場所: 岩手県沖
- 規模: M7.5
- 状況: 震度5強程度の揺れ。津波注意報が出るが、大きな被害は免れる。
- ★ここで「後発地震注意情報」が発表されます。
- 【数日後:後発地震】
- 場所: 三陸沖〜日本海溝全体
- 規模: M9.0(巨大地震)
- 状況: 震度7の激しい揺れに加え、東日本大震災級の巨大津波が発生。
ポイント: 最初のM7.5で建物がダメージを受けているところに、さらに大きなM9.0が来るため、倒壊リスクが高まります。また、最初の地震で「大したことなかった」と油断していると、次の巨大津波で逃げ遅れる可能性があります。
シナリオB:連動型(北と南で連鎖するパターン)
北海道の沖合(千島海溝)で懸念されているパターンです。
- 【最初の地震】
- 場所: 根室半島沖
- 規模: M7.8
- 状況: 北海道東部で強い揺れ。
- ★ここで「後発地震注意情報」が発表されます。
- 【その日の夜、または翌日:後発地震】
- 場所: 十勝沖〜襟裳岬沖(最初の地震の隣のエリア)
- 規模: M8.5
- 状況: 震源域が広がり、北海道から東北の広範囲に巨大津波が押し寄せる。
ポイント: 「隣の断層が刺激されて割れる」パターンです。最初の地震の復旧作業中に次の地震が来るため、混乱が極まります。
4. この情報が出たら、具体的にどうすればいい?
もしスマホのニュース速報などで「後発地震注意情報」を見たら、以下の行動を1週間続けてください。
- 事前避難は不要です: 津波警報などが出ていない限り、逃げる必要はありません。日常生活を続けてください。
- 「寝る時」の装備を変える: すぐに逃げられるよう、ジャージなど動きやすい服装で寝てください。枕元にスニーカーと懐中電灯を置いておきましょう。
- 防寒対策の徹底: 北海道や東北の冬は極寒です。避難時に凍えないよう、ベンチコートやカイロを玄関の目立つ場所に用意してください。
- スマホの充電と給油: 常に満タンを心がけましょう。
- 家族との連絡: 「もし次が来たら、どこに逃げてどこで落ち合うか」を再確認してください。
5. まとめ:正しく恐れて、備える
「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が出たからといって、必ず巨大地震が来るわけではありません。 統計的には、M7以上の地震のあとにM8以上が続く確率は「100回に1回程度」と言われています。
「なんだ、低いじゃないか」と思うかもしれません。しかし、**「平常時と比べれば確率は約100倍に跳ね上がっている」**のです。
この情報は「必ず来る予言」ではなく、**「空振りを覚悟で、命を守る準備をする1週間」**を作るための合図です。 仕組みを正しく理解し、いざという時に落ち着いて行動できるようにしておきましょう。