今回の問題では、知事が懇親会の席などで複数の女性職員に対し、容姿への言及や不適切な身体的接触を行った疑いが持たれています。本件が浮き彫りにしたのは、単なる個人の資質の問題ではなく、地方自治体のトップを取り巻く**「アップデート不全」**の構造です。


1. 「コミュニケーション」という名の免罪符

知事側の説明で繰り返されるのが、**「親愛の情を込めた」「場を盛り上げるためのコミュニケーションだった」**という言葉です。ここに最大の認識のズレがあります。

  • 具体例: 相手の肩を叩く、容姿を褒める(例:「今日も綺麗だね」「痩せた?」など)。
  • 深層心理: 昭和・平成初期の価値観では、これらは「可愛がっている証拠」と肯定される傾向にありました。しかし現代では、**「相手が不快に感じればハラスメント」**であり、特に上下関係がある中での身体的接触は、相手に拒否権を与えない「支配」の確認に他なりません。

2. 周囲の「イエスマン」化が生むエコーチェンバー現象

知事という職位は、県庁内において絶対的な権力を持っています。この環境が認識の修正を阻みます。

  • 具体例: 知事が不適切な発言をした際、周囲の幹部が「それは今の時代、問題ですよ」と諫めるのではなく、「知事はお茶目ですね」と笑って流したり、忖度して同調したりする。
  • 結果: 知事本人は「自分の振る舞いは受け入れられている」と誤認し、時代遅れの感覚が強化される「エコーチェンバー(共鳴室)」状態に陥ります。

3. ハラスメントの「グラデーション」の軽視

「性交渉の強要などの明確な事件でなければセクハラではない」という古い認識も根強く残っています。

  • 具体例: 「ちょっと触っただけ」「冗談を言っただけ」という軽視。
  • 現実: 現代の基準では、心理的な安全性を脅かす全ての言動が対象です。特に今回のケースのように、業務の延長線上である懇親会で行われる行為は、職員にとって「職務上の苦痛」に直結します。

4. なぜ修正されないのか? 地方自治体の「密室性」

民間企業では、ハラスメントが株価やブランドイメージに直結するため、コンプライアンス研修が厳格化されています。一方で、地方自治体のトップは選挙で選ばれるため、内部からの自浄作用が働きにくい側面があります。

  • チェック機能の欠如: 人事権を握るトップに対し、内部のハラスメント相談窓口が機能しにくい。
  • 昭和的政治文化の残存: 「酒の席は無礼講」「冠婚葬祭や宴席での振る舞いこそが政治」という古い文化が、不適切な言動を「社交術」として肯定してしまっています。

まとめ:リーダーに求められるのは「アンラーニング(学習棄却)」

今回の問題の本質は、知事が「悪いことをしている」という自覚すらないまま、過去の成功体験や古い価値観に固執したことにあります。

今、リーダーに求められているのは、新しい知識を学ぶこと以上に、「これまでの常識は今の非常識である」と過去の価値観を捨てる(アンラーニング)勇気です。福井県の問題は、全国の自治体や組織にとって「明日は我が身」の教訓と言えるでしょう。

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