1. 何が起きたのか?:2026年1月の新措置

2026年1月6日、中国商務省は**「日本向けの両用物資(軍事・民生の両方に利用可能な物資)の輸出管理を強化する」**という公告を出しました。

  • 措置の内容: 日本の軍事関連ユーザーや、日本の軍事力向上に寄与するとみなされる用途への輸出を全面的に禁止。
  • 背景: 日本の高市早苗首相による台湾情勢に関する発言(「台湾有事は日本の存立危機事態になり得る」)など、日中関係の悪化が引き金とみられています。
  • 特徴: 「日本」を明確に対象とした「狙い撃ち」の規制であり、非常に強い経済的威圧の側面を持っています。

2. 懸念される「レアアース」への波及と具体例

今回の規制で最も注目されているのが、**レアアース(希土類)**です。中国は世界のレアアース精製で圧倒的なシェアを握っており、日本が輸入を止められた場合、以下のような製品の製造が困難になります。

① 自動車産業:EV・ハイブリッド車の心臓部

電気自動車(EV)やハイブリッド車の駆動モーターには、強力な**「ネオジム磁石」**が欠かせません。

  • 具体例: トヨタや日産などのメーカーが、モーター用の磁石に必要な「ジスプロシウム」や「テルビウム」を調達できなくなり、新型車の減産や納期遅延が発生するリスクがあります。大和総研の試算では、輸送用機械の生産が17.6%減少する可能性も指摘されています。

② ハイテク製品:スマホからロボットまで

  • 具体例: スマートフォンのバイブレーション機能、ハードディスクのヘッド、産業用ロボットの関節モーターなど、精密な動きを必要とするあらゆる機器にレアアース磁石が使われています。これらの部品価格の高騰や供給停止が懸念されます。

③ クリーンエネルギー:風力発電

  • 具体例: 大型風力発電機のタービンにもレアアース磁石が使われます。脱炭素(GX)を進める日本にとって、エネルギーインフラの整備が停滞する恐れがあります。

3. なぜ「軍民両用品」という言葉が怖いのか?

「軍民両用品(デュアルユース)」という言葉の範囲は非常に曖昧です。中国側が**「これは日本の防衛能力を高めるために使われる」**と判断すれば、本来は民生用(一般消費者向け)の製品であっても、輸出が止められる可能性があります。

  • ドローンやロボット: 趣味用のドローンや介護・物流ロボットも、センサーやモーターのスペック次第で「軍事転用可能」とみなされ、ライセンスが降りなくなる恐れがあります。
  • 半導体製造装置: 日本が強みを持つ分野ですが、その製造に必要な部材が中国から届かなくなる「逆制裁」のリスクも現実味を帯びています。

4. 日本経済への影響:試算される損失

野村総合研究所の木内登英氏らの試算によれば、レアアースの輸出規制が1年続いた場合、日本の実質GDPを約0.4%〜3.2%(最大18兆円規模)押し下げる可能性があるとされています。これは、リーマンショック級の打撃に匹敵する数字です。


5. まとめと今後の展望

今回の中国の動きは、単なる貿易ルール変更ではなく、外交カードとしての**「経済的威圧」**です。

日本企業はこれまでも「チャイナ・リスク」を意識し、オーストラリアやベトナムからの調達ルート確保を進めてきましたが、精製技術などの面で依然として中国依存度は高いままです。

  • 今後の注目点:
    1. 中国商務省が「一般の民生品取引には影響しない」という説明をどこまで守るか。
    2. 日本政府が、WTO(世界貿易機関)への提訴や、供給網(サプライチェーン)の多極化をどう加速させるか。

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