「定年退職したらのんびり旅行して、孫と遊んで、ゆったり余生を楽しむ」
そんな未来図が、日本では急速に“過去の夢”となりつつあります。
現代の日本では、働きながら老後を生きるのが現実。定年後も働き続ける「死ぬまで労働」が当たり前になった背景と、これからの日本がどうなっていくのか、具体例を交えて解説します。
■ なぜ「死ぬまで働く」のが普通になったのか?
✅ 1. 年金だけでは生活できない
現在の国民年金の支給額は月約6.5万円、厚生年金でも月約15〜20万円ほど。都心部で生活するにはまったく足りません。
具体例:東京都在住・70代夫婦
年金:合計月18万円
固定費:家賃9万円+光熱費+食費=20万円超
→ パートで月5万円稼がないと赤字
✅ 2. 物価上昇と円安
2022年から続く円安傾向により、輸入品価格が上昇。ガソリン、電気代、食品価格が軒並み上がり、生活コストは上昇の一途。
具体例:東京都内スーパーの食品価格(2019年→2025年)
- 食パン:120円 → 180円
- 牛乳:180円 → 260円
- 鶏むね肉:100g 48円 → 100g 98円
生活支出が月2万円増えても、年金支給額は変わらない。
✅ 3. 高齢者雇用の一般化
厚生労働省の統計によると、70歳以上で働いている人は1000万人超。企業も人手不足のため、シニア人材を頼らざるを得ない状況です。
■ 実例:死ぬまで働く人々
◾ 70歳のタクシードライバー(大阪府)
「体はきついが、年金じゃ家のローンと医療費が払えない。休むと収入が減るから、月25日働いている」
◾ 65歳のスーパー店員(埼玉県)
「レジ打ちを10時間、立ちっぱなし。でも正社員時代の貯金も減ったし、やめたら生きていけない」
→ 彼らは“働きたい”のではなく、“働かざるを得ない”のです。
■ 今後の日本はどうなるのか?
◆ ① 定年の概念が消える
政府は「70歳まで働ける社会づくり」を推進。多くの企業で定年が65歳→70歳へと延長されつつあります。さらに定年そのものを撤廃する企業も登場しています。
◆ ② 労働寿命が健康寿命を超える
現在、日本の健康寿命(介護を受けずに自立して暮らせる年齢)は男性で72歳、女性で75歳前後。しかし、働く年齢が75歳を超えれば、「働けるけど体がもたない」という人が増え、過労死やメンタル不調のリスクも上がると懸念されています。
◆ ③ 若年層へのしわ寄せ
高齢者が定年後も働き続けることで、若い世代の昇進ポストが詰まり、キャリアアップが遅れる副作用も発生。年齢での給与上昇が見込めない「先の見えない働き方」が若者にも蔓延しています。
■ 他国と比べると…やっぱり日本は異常?
● ドイツ:定年67歳。再雇用はあるが、年金だけでも最低限生活できる仕組み。
● フランス:年金支給年齢を64歳に引き上げただけで大規模デモ。
● アメリカ:65歳前後でリタイア→投資や年金で生活する層が多い。
→ 日本は先進国で唯一「死ぬまで働くことが一般化している国」になりつつあるのが現実です。
■ 未来に希望はあるのか?
✔ 1. 「生活コストを下げる」意識改革
地方移住、ミニマリスト志向、コンパクトな暮らしを選ぶ人が増加中。
例:40代夫婦が都心から長野へ移住→生活費が月8万円下がり、共働きから週3勤務に切り替え
✔ 2. 副業・スキルアップによる自立
副業やスキルシェア(クラウドワークス、ココナラ等)により、会社に依存せずに収入を得る動きが加速。
例:退職後にブログやYouTubeを始め、月収5万円に→年金生活に余裕が生まれる
✔ 3. 政策転換の兆し
ベーシックインカムや最低保証年金の導入議論も徐々に活発化。
今後、政治が本格的に高齢者の生活支援を見直す可能性も。
■ 結論:今のままでは、明るい未来は見えない。でも…
確かに、今の日本社会は「死ぬまで働け」が普通になりつつあり、体力・精神力・経済力を持つ人しか生き抜けない構造です。
しかし一方で、
- 自分に合った生き方を再設計する人
- 副業や投資で生活を立て直す人
- 地方や海外移住で生活費を抑える人
など、希望を見出す人々も確実に増えているのも事実です。
☀ あなたにとっての「希望の光」は何か?
働き続けなければならない社会だからこそ、
「どう働くか」「どこで働くか」「何を大切にするか」
――この問いを立て直すことが、これからの時代の“生存戦略”になるのかもしれません。