近年、日本経済の一部を支える柱として「インバウンド(訪日外国人観光客)」と「中抜き産業(プラットフォーム型ビジネスによる手数料収入)」が注目されています。円安の追い風を受け、観光業は活況。一方、Uber EatsやAirbnb、楽天、Amazonなどの中抜きモデルも成長を続けています。

しかし、この2つの分野だけで日本の経済を本当に支えられるのでしょうか?この記事では、具体的なデータや事例を交えながら、日本の経済構造と今後の課題について掘り下げていきます。


1. インバウンド産業の実態:一時的なブームか?持続可能な成長か?

◾ 回復するインバウンド需要

日本政府観光局(JNTO)によると、2024年には訪日外国人観光客数がコロナ前の水準にほぼ回復し、年間3,000万人を超える見通しです。特に円安が進行することで、「日本が安くてお得な旅行先」として人気が急上昇。

▶ 具体例:大阪・道頓堀の行列

2024年のゴールデンウィーク中、大阪・道頓堀のたこ焼き店では、ほとんどの客が外国人観光客という状況に。1皿800円のたこ焼きが「激安」と感じられるようで、大量に購入する姿が見られました。

しかし、ここで注意したいのが「観光収入の偏在」と「観光業の雇用の質」です。

◾ 限界もあるインバウンド依存

  • 地域偏在:東京・京都・大阪など都市部に集中。地方は恩恵を受けにくい。
  • 低賃金の現場:ホテル清掃、飲食業など現場の仕事は人手不足でも賃金は上がらず、外国人労働者頼みに。
  • 災害や国際情勢の影響を受けやすい:コロナ、戦争、円高などで簡単に需要が激減する脆弱な構造。

2. 中抜き産業の現実:誰が儲けているのか?

中抜き産業とは、プラットフォームを提供する企業が手数料を取ることで収益を上げるモデルです。日本でもフードデリバリー、ECサイト、マッチングアプリなどさまざまな分野で普及しています。

◾ 具体例:Uber Eats

Uber Eatsは、配達員に直接雇用されず、成果報酬型で業務委託。手数料としてレストランから最大35%、利用者からも配達料を徴収しています。結果として、プラットフォーム提供側(米Uber社)は安定した収益を得ますが、配達員は天候や需要に左右され不安定な収入。

また、Amazonや楽天市場でも、出店業者は売上の一定割合をプラットフォームに支払っており、労力の割に利益が残らないこともしばしば。

◾ 問題点:

  • 利益の大半が海外企業や大手企業に吸い取られる
  • 労働者はフリーランス化し、社会保障が脆弱
  • イノベーションが生まれにくい構造に

3. 日本経済全体から見たときの限界

インバウンドと中抜き産業が成長しているのは確かですが、日本のGDP(国内総生産)の大半を占めるのは「製造業」と「内需(個人消費・企業投資)」です。つまり、以下の点に注目する必要があります:

  • インバウンド消費は全体の数%程度
  • 中抜き産業の多くはサービス業であり、輸出に寄与しない
  • 技術開発・高付加価値産業への投資が減っている

4. 未来への提言:どうすれば「持続可能」になるのか?

◾ インバウンドを「消費」から「投資」へ

外国人観光客に「モノを買ってもらう」だけでなく、「体験・教育・医療・文化への投資」へと発展させることが重要です。

例:日本の伝統工芸を学ぶワークショップ、京都の寺院での座禅体験、有料の文化講座など。

◾ 中抜き構造を見直し、地域主体のプラットフォームへ

プラットフォームを外資に依存せず、地域や国内企業が主体となる仕組みづくりが求められます。

例:地元商店街が連携して作った「地元版デリバリーアプリ」など。


結論:インバウンドと中抜き産業は「一部の支柱」にすぎない

確かに、これらの分野は短期的な収益には貢献しますが、日本経済全体を支えるには不十分です。むしろ、「安さ」や「手数料収入」に依存する構造から抜け出し、「技術・人材・価値」の育成にシフトしていくことが求められます。


本当の意味で日本を支える産業とは、外貨を稼ぎ、雇用を生み、未来の価値を創造する分野です。
インバウンドも中抜きも、それを補完する“手段”であるべきで、“目的”になってはならないのです。

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