日本に住んでいると、「税金が高すぎる」と感じる瞬間が少なからずあります。所得税、住民税、消費税、自動車税、相続税……生活するうえで様々な税金が課されており、手取り収入が思ったより少ないと驚く人も多いでしょう。
では、なぜ日本ではこれほどまでに税金が高いのでしょうか?今回は、いくつかの具体例を交えながら、その理由をわかりやすく解説します。
1. 社会保障費の増大
最も大きな理由は、社会保障費の膨張です。
▶ 具体例:年金・医療・介護の費用
日本は高齢化が急速に進んでおり、65歳以上の人口は総人口の約30%を超えています(2024年時点)。この高齢者層を支えるために、年金、医療、介護といった社会保障サービスの費用が年々増加しています。
例えば、2024年度の国家予算のうち、社会保障関連費だけで約40兆円以上が使われており、これは予算の3割以上を占めています。
高齢者の医療費の自己負担割合が1〜2割に抑えられている一方で、その不足分は現役世代が納める税金や保険料で補っています。これにより、働く世代の税負担が重くなっているのが現状です。
2. 国の借金(財政赤字)の多さ
日本は世界でもトップクラスの財政赤字国です。
▶ 具体例:国の借金は1,200兆円以上
日本政府の借金(国債残高)は2024年時点で1,200兆円以上にのぼります。これは国民一人あたり約1,000万円の借金を背負っている計算になります。
この巨額の借金の利子や償還(返済)に充てるために、新たな税収が必要となり、増税圧力が高まっているのです。
3. 消費税の増税とその背景
▶ 具体例:消費税3% → 10%
消費税は1989年に3%で導入されましたが、現在では10%にまで引き上げられています。背景には社会保障費の財源確保があります。
消費税は「広く浅く」集められるため、税収としては安定しており、政府としては年金や医療の財源として重宝されています。しかし、消費者にとっては生活費への直接的な打撃となり、「税金が高い」と感じる一因になっています。
4. 中間層の税負担が重い
日本の税制は一見「累進課税制度」(所得が多いほど税率が高い)を採用していますが、実質的には中間層の負担が重くなる傾向があります。
▶ 具体例:給与からの天引き
会社員の多くは、所得税や住民税が「源泉徴収」という形で毎月の給料から自動的に天引きされます。また、健康保険料や厚生年金もかなりの額が差し引かれるため、額面収入と手取り収入の差が大きいのです。
年収500万円の会社員の場合、手取りは約380万円程度にまで下がることもあります。これは税金・保険料が実質的に120万円も差し引かれていることを意味します。
5. 法人税は下がっている
一方で、企業が支払う法人税率は引き下げ傾向にあります。
▶ 具体例:法人税率の推移
かつて40%以上だった法人税率は、現在では約30%以下に抑えられています。これは国際競争力の維持のために行われた政策ですが、その分の税収減を補うために、個人に対する課税が強まっているのです。
結論:税金が高いのには理由があるが、見直しも必要
日本の税金が高いと感じられるのは、単に税率が高いからではなく、社会保障費の増大、財政赤字、中間層への負担の集中など、構造的な問題が背景にあります。
ただし、こうした背景があったとしても、現役世代や若者への過度な負担が続くようでは、将来的な経済活力を奪いかねません。今後は、より公平で持続可能な税制改革が求められるでしょう。