日米合意に隠された「不都合な真実」?日本側説明と異なる米国の公表文書

2020年1月1日、日米間で発効した日米貿易協定。 当時、日本政府は「牛肉や豚肉といった農産物の関税がTPP(環太平洋パートナーシップ協定)並みに引き下げられ、日本は自動車の関税撤廃は求めない」と説明し、国内に大きなメリットがあるかのように強調していました。

しかし、この協定には、日本側が説明しなかった重要な事実が隠されていました。それは、米国が自動車に対する関税措置を将来的に適用する可能性を残している、という点です。


1. 問題の核心:「関税措置の不記載」と「EUとの違い」

日本政府が国民に説明した内容と、米国政府が公表した文書には、決定的な違いがありました。

  • 日本側の説明: 「日米貿易協定には、日本車の関税を撤廃するという約束は盛り込まれていないが、米国側は関税を引き上げるような措置はとらない」と説明。
  • 米国の公表文書: 米国税関・国境警備局(CBP)が公表した文書には、日本からの輸入自動車に対する関税措置の適用除外について、明確な記載がなかったのです。

これは、米国が将来的に日本車に対して、最大25%もの追加関税を課す可能性を排除していないことを意味します。つまり、日本側が「関税措置はとられない」と信じていた前提が、米国の公文書には存在しなかったのです。

この問題の深刻さは、EUとの協定と比較するとより明確になります。

  • EUとの協定: 米国とEUが締結した協定では、「EUからの自動車は、通商拡大法232条に基づく追加関税措置の対象にはならない」という文言が明記されています。

なぜ、EUとの協定では明記されている内容が、日本との協定では記載されなかったのでしょうか? この点について、日本政府は「米国側から口頭で確認をとっている」と釈明しましたが、法的な拘束力を持つ文書に記載されていない以上、その約束が守られる保証はありません。


2. 具体的な事例:もし25%の追加関税が課されたら?

もし米国が日本からの自動車に対して25%の追加関税を課した場合、どのような影響が出るのでしょうか?

  • 例1: 200万円の日本車を米国に輸出した場合
    • 関税なし: 200万円
    • 25%の関税: 200万円 + 50万円(関税) = 250万円

価格が大幅に上昇するため、米国市場における日本車の競争力は著しく低下します。これにより、日本の自動車メーカーの収益は減少し、工場での生産調整や雇用にも影響が及ぶ可能性があります。

  • 例2: 200万円の日本車が250万円に値上がりした場合
    • 消費者はより安価な米国車や他国産車を選ぶ可能性が高まる。
    • 日本から米国への輸出台数が激減し、日本の自動車産業全体が大きな打撃を受ける。

3. この問題から見えてくる「交渉力」の差

この一件は、日米間の交渉力の差を浮き彫りにしました。日本側は、関税措置が適用されないことを文書に盛り込むことができず、米国の「口約束」に依存せざるを得ませんでした。一方で、EUはしっかりと自国の利益を守るために、法的に拘束力のある文書にその内容を明記させました。

国際交渉において、口頭での約束は法的効力を持たないため、文書に記載された内容がすべてです。今回の件は、日本政府の交渉における甘さや、国民への説明不足を指摘せざるを得ない事態と言えるでしょう。


まとめ:今後の展望

この問題は、単なる貿易協定の話ではありません。これは、国の将来を左右する重要な交渉において、いかにして自国の利益を確保するかという根本的な課題を突きつけています。

今後、米国が日本車に追加関税を課す可能性はゼロではありません。日本政府は、このリスクにどのように対処していくのか、そして国民に対して、なぜこのような不透明な合意に至ったのか、明確な説明責任が求められています。

日米貿易協定は、日本にメリットをもたらす一方で、大きな潜在的リスクも抱えているのです。

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