はじめに
「賃上げが必要です。もっと働いて経済を回しましょう」
一見、正論に聞こえるこの言葉。しかし、すでに**限界まで働かされている多くの日本人にとっては、ただの“悪魔のささやき”**でしかありません。
残業、休日出勤、低賃金、サービス労働――
そうした現実を無視し、「努力が足りない」とでも言うような政治家たちの発言が、いま国民の怒りを買っています。
今回は、具体例を交えて、「働けば報われる」という幻想と、それを政治の側から押しつける危険性について掘り下げます。
1. 「もっと働いて賃上げを」は現場の現実を無視した発言
最近、自民党の一部議員からこんな声が聞こえてきました。
「生産性を上げて、皆がもう少し努力すれば、日本経済は回復する」(経済再生本部関係者)
「企業はまだ賃上げ余力がある。頑張れば報われる社会をつくるべきだ」(某議員)
――けれど、今の日本人に**“頑張れる余力”が本当に残っているのでしょうか?**
現実の一例:
- 20代女性(飲食業・東京):「週6勤務、1日12時間労働で手取り16万円。これ以上、何を頑張れと?」
- 40代男性(運送業・大阪):「荷物増えても人手不足で1人で2人分の仕事。疲れて事故寸前」
こうした現場の声に耳を傾けることなく、「もっと働け」と言う政治家に対し、多くの国民はこう感じています。
「あんたら、本当に働いたことあるの?」
2. 日本人はすでに“世界一働いてる”のに報われない
日本はOECD諸国の中でも労働時間は長く、労働生産性は下位という、いびつな構造に陥っています。
データで見る現実:
- 日本の平均年間労働時間:約1,607時間(2023年)
- ドイツ:約1,349時間/フランス:約1,511時間
- 日本の時間当たり労働生産性:OECD38カ国中29位(2023年・日本生産性本部)
つまり、日本人は長時間働いても効率が悪く、しかも賃金は上がらないという「頑張っても報われない」構造に苦しんでいるのです。
それなのに、政治家が言う「もっと働けば豊かになる」という論理は、現実と乖離しすぎています。
3. 「賃上げ」を“自己責任”にしてはいけない
本来、賃上げは“個人の努力”ではなく、企業の利益配分のあり方や、政府の制度設計にかかっています。
たとえば:
- 企業は過去最高の内部留保を抱えつつも、正社員は増やさず非正規雇用に依存
- 政府は実質賃金が下がっても、インフレに便乗した「名目ベースの賃上げ」でごまかす
さらに、最近話題になったのが:
「年収の壁問題」に対し、「パート主婦にもっと働いてもらえばいい」と発言した某与党幹部。
この発言に対し、ネットでは「家事も育児もして、さらに労働時間増やせと?」と批判が殺到。
現場の労働実態を知らない“机上の空論”が浮き彫りになりました。
4. 本当に必要なのは「働き方改革の本気化」
「もっと働いて賃上げ」は、もはや限界。
本当に必要なのは、“もっと働け”ではなく、“働きすぎの人を守る仕組み”です。
具体的には:
- 内部留保課税の導入:大企業が溜め込んだ資金を、労働者の賃金に回すプレッシャーをかける
- 生活に直結する減税・支援策:消費税減税、住宅手当拡充、交通費補助など
- 強制的な労働時間短縮と有給取得義務化:労働時間を減らしつつ、最低賃金を上げる政策転換
5. まとめ:働きすぎが前提の経済成長論は終わりにすべき
今の日本は、「すでに疲れ切った人間に、さらにムチを打って走らせる」ような政治に向かっています。
これは、単に“無知”なのではなく、国民を道具としてしか見ていない冷淡さの表れでもあります。
「もっと働け」が賃上げの条件になる社会は、すでに終わっている。
政治家に必要なのは、“努力を求めること”ではなく、“報われる構造をつくること”です。
最後に:
もし政治家の誰かがこのブログを読んでいるなら、お願いです。
一度でいいから、通勤ラッシュの満員電車にスーツで乗ってみてください。
現場の地獄を知らずに“頑張れ”というのは、もうやめましょう。