「え、今年の異動先、◯◯課?」
「そこ、あの“有名な上司”がいるところだよ……」

公務員の世界で日常的に聞かれるこんな会話。
そう、役所における人事異動は、時に“運任せのガチャ”のようなものであり、パワハラ上司がいる部署に当たってしまうことも現実です。

しかも、「公務員なんだから多少の厳しさは当然」と、組織側もパワハラを見て見ぬふりすることが少なくありません。

この記事では、異動でパワハラ部署に配属された場合に取るべき法的対処法を、実際の例とともに詳しく解説します。


1. 異動後すぐに感じた「違和感」は放置しない

具体例:
ある市役所で4月に異動した30代女性職員。配属初日から上司に無視され、指導はなく、業務で小さなミスをすると「前の部署では何してたんだ?」と大声で叱責。次第に他の職員も距離を置くように。2か月後、体調を崩して休職に。

この時点でやるべきこと:

  • 日記形式で毎日の行動・発言・感情を記録
     →「○月○日 上司に業務の相談をしたが“自分で考えろ”と言われた」
  • **第三者が確認できるような証拠(メール・録音・LINE等)**を保存
  • 「最初の違和感」を軽視しないことが最大の予防策です

2. 内部通報制度を利用する(が、慎重に)

ほとんどの自治体にはハラスメント相談窓口内部通報制度があります。

■ 相談できる相手の例:

  • 人事課や総務課内のハラスメント担当
  • 所属長(上司が加害者でなければ)
  • 労働組合の支部
  • 組織内の公務員相談窓口(匿名可)

注意点:
・部署内で相談すると内容が漏洩するリスクもあります
・相談履歴を記録に残しておく(メールで相談した場合はバックアップ)


3. 第三者機関に相談する(外部に“逃げ道”を確保)

「組織内では信用できない」「相談してももみ消される」と感じた場合は、外部機関に早めに相談を

■ 有効な相談先:

  • 都道府県労働局の総合労働相談コーナー
     → 匿名でもOK。無料で法的アドバイスを受けられる。
  • 弁護士会の労働相談窓口
     → パワハラや不当配置の証拠がある場合、損害賠償請求も可能
  • 公務員ハラスメント110番(NPO・弁護士団体などが運営)

具体例:
「異動先で毎日無視され、名指しで全体会議中に叱責された」→録音と業務日誌を証拠として労働局に提出 → 労基署が役所に是正勧告 → 配属先変更が実現。


4. 「異動願い」を出すときの注意点

パワハラが深刻でない場合でも、「このままではメンタルがもたない」と感じたら、異動願い(人事異動希望)を提出するのも有効な選択肢です。

■ 書き方のポイント:

  • 「体調への影響」「業務に支障が出ている」など事実ベースで
  • 「〇〇課に戻してほしい」という特定希望は避ける(配慮を促す形に)
  • 診断書があると説得力が大幅に上がる

具体例:
「精神的な負担が続いており、医師から環境を変えることを勧められている」→人事課が事態を把握し、翌年度の人事で異動に配慮されたケースあり。


5. 民事訴訟・慰謝料請求も可能

公務員でも、民法上の不法行為として損害賠償(慰謝料)を請求することが可能です。

■ 実例:

ある県庁職員が、上司から「仕事が遅い」「辞めろ」「誰もお前なんか必要としていない」と日常的に罵倒され、適応障害を発症。
→ 録音と診断書を元に地方裁判所で上司と自治体を提訴。慰謝料100万円の支払い命令が下る(2021年 大阪地裁判決)


まとめ:「運が悪かった」で終わらせないために

役所の異動は確かに“ガチャ”かもしれません。
ですが、「パワハラ部署に当たったら自己責任」では済まされない時代になっています。

泣き寝入りせず、証拠を集め、相談を重ね、冷静に動くことがあなたを守ります。


あなたがパワハラで苦しんでいるなら、一人で抱え込まないでください。
この記事が、あなたの第一歩のきっかけになれば幸いです。

投稿者 ブログ書き