リード文:
「外国人だからってパスポートの提示を求めるのは差別だ!」
2025年7月、韓国の市民団体が日本のホテル業界に対してこのような是正要求を行ったというニュースが、日韓両国で波紋を呼んでいます。日本では当たり前とされてきた「外国人宿泊者の本人確認」が、なぜ“差別”と捉えられてしまったのでしょうか?その背景、制度、双方の主張、そして今後の影響について、具体例を交えて解説します。
1. 問題の発端:「パスポート提示は差別」との声明
2025年7月、韓国の市民団体「韓日平和市民ネットワーク」は、日本の全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)に対し、次のような要望を提出しました。
「外国人宿泊者に対し、パスポートや在留カードの提示を求める行為は不必要な差別的対応である」
「韓国籍の定住者・永住者・留学生など、在日外国人を“旅行者”扱いするのは偏見に基づいた不当な取扱いだ」
この声明を受け、SNSやメディアでは賛否両論が巻き起こっています。
2. 日本側のルール:パスポート提示は法律に基づく義務
日本の旅館業法では、外国人旅行者(日本に住所を持たない者)がホテルや旅館を利用する際、宿泊者名簿への記入のほか、国籍と旅券番号の記載、そして旅券(パスポート)の提示が義務づけられています。これは2005年以降、インバウンド増加に伴って施行されているルールです。
なぜこのようなルールがあるのか?
- テロ対策や治安維持のため
- 不法滞在・不法就労の抑制
- 宿泊者の正確な把握と安全管理
そのため、施設側がパスポートを求めるのは“差別”ではなく、“法令順守”であり、違反すればホテル側が指導・処分の対象になります。
3. 韓国団体の主張の背景とは?
この団体が問題視しているのは、「外国籍だからという理由で一律に身分証提示を求める行為」であり、以下のようなケースが実際に報告されています。
【具体例】
- 韓国籍の大学生(留学生・日本在住)が大阪のビジネスホテルに宿泊しようとしたところ、在留カードの提示を求められた
- 彼は「既に日本に住所がある」と主張し、「なぜ日本人と違って身分証を出さなければならないのか」と憤慨
- フロント対応のスタッフは「外国人は全員提示が必要です」と回答したが、これは誤った運用であった
このような“ホテル側の理解不足”によって、在日韓国人や留学生、定住外国人までもが旅行者扱いされてしまうケースがあると、団体側は問題視しています。
4. 日本ホテル協会の反応と現場のジレンマ
日本ホテル協会や全旅連はこれまで、外国人対応について「旅館業法を順守している」と繰り返してきましたが、以下のような“グレーゾーン”が存在するのも事実です。
ホテル現場の悩み:
- 「日本に住所があるか」をどうやって確認すればいいのか?
- 見た目や名前だけでは判断できない。誤解があれば差別に繋がる恐れも
- 外国人からのクレームやトラブルを避けるため、一律提示を求めてしまうケースが多い
結果として、“差別ではないが差別に見える”対応になってしまうという問題があります。
5. 国内外の反応と波紋
この件をめぐり、日本国内ではSNS上で以下のような意見が見られます:
肯定的な意見(団体支持)
- 「日本在住の外国人を一律で旅行者扱いするのは失礼では?」
- 「日本のホテル側の教育不足が問題。制度の見直しも必要では」
否定的な意見(制度維持派)
- 「パスポート提示は法律なんだから当然」
- 「韓国団体は何でも差別にしてくる。日本の治安を守る方が大事」
また、韓国側でも日本の制度を「時代遅れの対応」と批判する声が一部で上がっています。
6. 今後どうなる? 日韓の“共存ルール”を模索すべき時期に
今回の件をきっかけに、日本のホテル業界では「外国人対応マニュアルの見直し」や「スタッフ教育の強化」が検討され始めています。
同時に、制度そのものについても「差別と誤解されないような透明性と明確な基準」が求められるでしょう。
まとめ:制度と配慮のバランスをどうとるかがカギ
「パスポート提示は差別か?」という問いは、一面的な正解がない、極めてデリケートな問題です。
安全・治安を守る制度としてのルールが必要な一方で、住民として共に暮らす外国籍の人々に対する人権意識や配慮も重要です。
今回のような声が上がるたびに、「制度の再確認」と「運用の見直し」が必要であり、それは日本社会全体の“成熟度”が問われているとも言えるでしょう。