東京・浅草といえば、日本文化を象徴する観光地の一つ。雷門、仲見世通り、浅草寺――日中は着物姿の人力車や和菓子屋に賑わいが戻ってきた。
しかし、その光景は夜になると一変する。
「ここは日本か?」と思わず呟いてしまうほど、夜の浅草は外国人観光客だらけで、目立つ日本人は路上で寝ているホームレスだけ――。そんな“異様な光景”が現実になっている。なぜこのようなことが起きているのか、現場の声と社会の背景から読み解く。


1. 実際に起きている「夜の浅草」の異変

浅草は東京でも有数の観光名所だが、特にコロナ禍明け以降、夜間の様相が劇的に変化している。

【具体例①:外国人観光客が中心の夜景スポット化】

午後8時以降、浅草寺や雷門前では観光客が大勢集まり、記念撮影・ライブ配信・ナイトツアーが行われている。
雷門を背景にTikTokやInstagram用の動画を撮影する外国人カップル、ドローンで空撮する西欧系の旅行者、屋台前で大声ではしゃぐ若者集団など、聞こえてくるのはほとんどが英語・中国語・韓国語

地元住民の声:
「夜の浅草に行っても、まるでバンコクか香港にでも来たような錯覚に陥る。もう“日本らしさ”は残っていないかもしれない」(台東区在住・60代)


2. どこに日本人がいるのか?

観光地にも関わらず、夜の浅草で見かける“日本人らしい姿”は、意外にもホームレスばかり。

【具体例②:隅田公園のベンチで眠る高齢男性】

夜10時、浅草駅から5分ほど歩いた隅田川沿いのベンチでは、数人の日本人高齢者が段ボールを敷いて横になっている。荷物を抱えて座り込む姿も見られ、彼らの多くは住所不定。
彼らが“目立ってしまう”のは、周囲があまりにもインバウンド客で溢れ、日本人が消えているため。

ホームレス支援NPO関係者の声:
「都心部の再開発や物価高で、居場所を失った人が浅草などの観光地に移動してきている。一方で、外国人観光客が夜でも動いているから、より目立ちやすい」


3. なぜこのような光景が生まれたのか?

① インバウンド偏重政策の影響

コロナ明け以降、日本政府は観光立国再始動に向けて訪日外国人の誘致を最重要戦略に掲げた。
浅草も例外ではなく、ナイトタイムエコノミー推進、ホテル・ゲストハウスの急増、免税店の誘致などが行われた。

台東区の観光白書によると、2024年度の浅草エリア訪日外国人数は約950万人で、日本人観光客の6倍以上にのぼる。

② 都心の住宅難と貧困層の可視化

地価・家賃高騰により都内の低所得者が住居を確保できず、公共空間で夜を過ごす事例が増加。
特に浅草は公園や河川敷が多く、“見えにくい貧困”が集中しやすい場所となっている。


4. 浅草が「二重構造の街」になっているという現実

昼間は観光と商業で賑わい、夜は外国人の社交場と化す浅草――その陰で、日本人高齢者や生活困窮者がひっそりと路上にいるという二重構造が形成されつつある。

この構図は、観光産業の成功の裏で見過ごされがちな社会問題の象徴とも言える。

観光学者の指摘:
「観光地化は経済効果を生む一方で、地域の本来の住民の生活や社会的弱者の存在を“見えにくく”してしまう。浅草は今、その典型例」


5. まとめ:本当にこれが“理想の観光都市”なのか?

観光客で賑わう街、経済が潤う街は一見華やかです。しかし、「日本人の姿が消えた夜の浅草」には、日本社会が抱えるリアルな問題が凝縮されています。
観光と共生、経済と福祉、そのバランスをどう取るのか――浅草の夜の風景は、私たちに問いかけているのかもしれません。

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