「コメの生産が、需要に対して不足している状況を招いた。判断を見誤ってしまった。」

小泉農林水産大臣のこの発言は、国民に大きな衝撃を与えました。私たちの食卓を支えるコメが、なぜ突然不足する事態に陥ったのか?その背景には、国の政策判断の甘さと、長年にわたる農業の構造的問題が隠されています。


1. コメ不足問題の根本原因

今回のコメ不足は、単なる天候不順や一時的な不作が原因ではありません。複数の要因が複合的に絡み合って発生しました。

原因1:政策的な減反(コメの生産調整)

長年にわたり、国はコメの供給過剰を防ぐため、農家に対して作付け面積を減らす**「減反政策」**を推奨してきました。補助金を通じて、水田を他の作物に転換させたり、休耕地を増やしたりする政策を続けてきたのです。

具体例:

  • 農家Aさんは、コメの価格が下がることを恐れ、国の補助金を受け取ってコメの作付けを減らし、代わりに飼料用の米や大豆を栽培していました。

この政策は、コメの価格を安定させる目的でしたが、結果的に生産能力そのものを縮小させてしまいました。

原因2:コロナ禍による消費の変化

コロナ禍により、外食産業でのコメ需要が大幅に減少しました。これにより、政府は「コメが余る」と判断し、さらに減反を推奨する方向へと舵を切りました。

具体例:

  • 多くの飲食店が営業自粛や時短営業を余儀なくされ、業務用のコメ消費量が激減しました。この状況を受け、政府は「今後も需要は回復しないだろう」と予測しました。

原因3:需要の急激な回復

しかし、パンデミックが落ち着き、経済活動が再開すると、外食産業でのコメ需要は予想以上に早く回復しました。さらに、家庭での消費も安定していたため、コメの需要が急増しました。


2. 小泉農水相の「判断の見誤り」と、その代償

政府は、需要が回復するタイミングを正確に予測できず、「コメが余る」という前提で減反政策を継続してしまいました。その結果、需要が回復した時には、すでに供給体制が縮小しており、深刻なコメ不足を招くことになったのです。

この「判断の見誤り」は、以下のような形で私たちの生活に影響を及ぼしました。

  • スーパーの店頭からのコメの品薄化
  • コメ価格の高騰
  • 外食産業でのコメの安定供給への懸念

特に影響を受けたのは、飲食店の経営者です。

具体例:

  • 小さな定食屋を営むBさんは、いつもの卸売業者から「コメの在庫が不足しているため、供給量を半分に減らす」と通告されました。仕入れ価格も高騰したため、メニューの値上げを検討せざるを得なくなりました。

3. 増産への舵切りは間に合うのか?

小泉農水相は「責任は重く受け止め、これを機に増産へ舵を切る」と発言しました。しかし、農業はすぐに生産量を増やせる産業ではありません。

増産への課題

  • 種まきから収穫までの時間: コメは種をまいてから収穫まで、半年近くかかります。来期の増産に向けた具体的な対策を講じなければ、供給不足は続く可能性があります。
  • 作付け面積の確保: 減反政策で他の作物に転換したり、休耕地となったりした水田を、すぐにコメ作付けに戻せるかは不透明です。
  • 農業従事者の高齢化: 農業従事者の高齢化が進む中で、急な増産に対応できる労働力が不足しています。

今回のコメ不足問題は、食料安全保障の重要性を再認識させる警鐘となりました。増産への舵切りは不可欠ですが、その道のりは決して平坦ではありません。政府は、目先の対策だけでなく、持続可能な農業の未来を見据えた抜本的な改革を進めることが求められています。

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