最近、ソウルの明洞など繁華街で中国人観光客の増加に反対するデモが連日行われている、という報道が相次いでいます。背景には今年導入された中国団体客向けの一時的なビザ免除政策や政治的な対立、世論の高まりなどがあり、現地の雰囲気は一部で緊張しています。報道によるとデモは頻発し、当局や在外公館も注意喚起を出す場面が見られます。FNN+1

この記事では、「こういう時こそ旅行を増やして経済を回そう」という主張をただ繰り返すのではなく、現地事情を踏まえた安全で配慮ある旅行の具体例とメリット/リスクを、実際の事例や数字に基づいてわかりやすく解説します。


1) 現状の整理(事実ベース)

  • 反中国デモは首都ソウルで頻繁に行われており、場所は明洞など観光地周辺に集中することが多いと報じられています。デモ参加者は「ビザ免除に反対」「中国人観光客を減らせ」といったプラカードを掲げる例が確認されています。FNN+1
  • それでも短期的には中国人観光客の流入は一定程度維持されており、旅行業界は動向を注視しています。例えばクルーズや航空の迂回で済州(Jeju)など他の目的地に需要が流れる可能性が報告されています。South China Morning Post+1

2) 「こういう時こそGo To Travel!」の論点整理

このスローガンは一面で合点がいきます。観光は飲食や小売、宿泊、交通といった地域経済に直接効くため、観光需要を保つことは雇用と町の維持にとって重要です。しかし一方で、地元住民の不安・反発が強い場面で無配慮に観光を推進すると「トラブル」や「差別的行為」を助長してしまうリスクもあります。したがって重要なのは**“増やす”か“自粛する”かの二択ではなく、どう増やすか(=責任ある、配慮ある形)**です。South China Morning Post


3) 具体的な“責任ある観光”のアイデア(実践例)

以下は現地の事情を踏まえ、旅行者・旅行業者・自治体それぞれが取り得る具体策です。

(A)旅行者向け:行くなら「安全配慮」を最優先に

  • デモ・集会の情報をチェック:渡航前・滞在中に在外公館や現地メディアの告知、SNSでの警報を確認する。特に明洞や中国大使館周辺などは集合場所になることがあるので避ける。FNN
  • 混雑繁華街を避けるルート設計:明洞や鍾路などデモが起きやすい中心地だけでなく、釜山(Busan)、済州(Jeju)、江原道(Gangwon)の沿岸リゾート、小都市の名所などへの分散旅行を検討する。最近はクルーズの寄港地変更で済州への注目が高まっている例もあります。Reuters
  • ローカルの店を直接支援:個人経営の飲食店や民宿、地域ガイドを利用して“直接的な経済支援”を行う。観光収入が地元の生活を支える実例は多い。South China Morning Post

(B)旅行業者向け:プロとしての配慮と代替プラン

  • ツアーコースの分散化:繁華街中心の“密集型”ツアーを再編し、郊外・地方を組み入れたプランにシフトする(例:ソウル発で慶州や全州、済州など日帰り/1泊増のプラン)。South China Morning Post
  • 現地の安全情報を明示:予約ページや案内書に「現在のデモ状況」「危険回避のための連絡先」を明示することで旅行者の安心感を高める。
  • 地元と連携した“フォローアップ支援”:デモで売上が落ちた商店街向けに企画ツアーや地域割引を行う。

(C)自治体・観光局向け:誘致の仕方を再設計

  • 分散型プロモーション:首都一極集中を避け、地方観光の価値を打ち出す(祭り、温泉、農村滞在など)。
  • 安全確保のための情報発信:デモが発生した際に速やかに案内を出し、訪問者が無用なトラブルに巻き込まれないようにする。政府・警察と協調した観光客保護策の検討も重要です。報道では政府が集会対策を強化する動きも見られます。Anadolu Ajansı

4) 具体例:モデル日程(日本から3泊4日、“配慮型”ソウル)

  • 1日目:早朝到着 → 弘大(Hongdae)周辺でカフェ/個人商店支援 → 夜は漢江(Han River)のクルーズ(屋外で分散)
  • 2日目:京畿道の日帰り(古都・文化体験)→ 地元の民宿で地域交流(観光収入の“直接還元”)
  • 3日目:済州または釜山へ国内移動(飛行機・フェリー利用) → 海外観光客で混雑するソウル中心部を避ける
  • 4日目:帰国前に観光案内所で“お土産割引クーポン”を使い地元商店を支援

こうした“分散かつローカル支援”のモデルは、地元経済に利益をもたらしつつ、デモやトラブルに巻き込まれるリスクを下げます。観光業界の報告でも“分散・地方観光”へのシフトが示唆されています。South China Morning Post


5) リスクと反論への向き合い方

  • 感情的反発を煽らない:現地で「こういう時こそ来てやった」と挑発的な言動をすることは避ける。国外から来る観光客の行動が地元の緊張を高める可能性がある点に留意すべきです。
  • 安全保障リスクの認識:政治的緊張や大規模デモが突然激化する可能性はゼロではない。旅行前の情報確認は必須です。ザ・ガーディアン

6) まとめ:今こそ「行くなら、配慮して行く」

「こういう時こそGo To Travel!」という発想は、地域経済支援という観点からは理解できますが、“如何に行くか”が肝心です。デモや反感がある地域に無配慮に押しかけるのではなく、分散型ルート、地元商店の直接支援、現地の安全情報に従う――こうした「責任ある旅行」の設計こそ、長期的に見れば観光業と地域社会の両方を救う最善手になります。現地で困っている人を助ける行為は、敬意を持った振る舞いとセットでこそ価値があります。

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