為替相場はまさに「言葉」で動く生き物です。今回の円安進行は、アメリカの通貨政策のトップであるベッセント財務長官が、市場に流れていた**「米当局が円買い介入に動いている」という噂を真っ向から否定**したことで起きました。
1. 発言の核心:「絶対にしていない」と「強いドル」
1月28日、米CNBCのインタビューに応じたベッセント財務長官は、円安是正のための介入について問われ、こう断言しました。
「(介入は)絶対にしていない(Absolutely not)」
さらに、「アメリカは常に強いドル政策を支持している」と強調。 この発言が、それまで積み上がっていた「ドル売り・円買い」のポジションを一気に解消(巻き戻し)させる原動力となりました。
2. なぜ市場は「介入がある」と勘違いしていたのか?
今回、ベッセント氏がわざわざ火消しに回らなければならなかった背景には、市場を騒がせていた「具体的予兆」がありました。
- 具体例:NY連銀による「レートチェック」の噂 前週末から、「ニューヨーク連銀が主要銀行に対し、円ドルの為替レートを確認する『レートチェック』を行った」という情報が市場を駆け巡りました。レートチェックは通常、実弾介入の直前に行われるため、投資家たちは「トランプ政権もドル安・円高を望んでいるに違いない」と確信し、先回りして円を買っていたのです。
- トランプ大統領の発言とのギャップ 前日にはトランプ大統領がドル下落について「素晴らしい」と発言しており、市場は「大統領と足並みを揃えて財務省も動くはずだ」と思い込んでいました。しかし、ベッセント氏の否定により、その前提が崩れました。
3. 具体的な相場の動きと影響
ベッセント氏の発言後、マーケットは即座に反応しました。
- 1円以上の急落: 152円台半ばで推移していた円相場は、発言直後に一気に153円台後半へ。その後、じわじわと売りが続き、154.05円付近まで円安が進みました。
- 長期金利への波及: ベッセント氏が「強いドル」の根拠として「健全なファンダメンタルズ(経済の基礎条件)」を挙げたことで、米長期金利も上昇。これがさらなるドル買いを誘うという循環が生まれました。
4. 今後の焦点:155円の壁と日銀の動向
今回のベッセント発言により、「アメリカは円安を止めるために直接動く気はない」というメッセージが明確になりました。
今後の注目ポイント:
- 日本の単独介入はあるか: 米当局が動かない以上、円安が加速すれば日本政府・日銀が単独で介入に踏み切るかどうかが再び焦点になります。
- 日銀の追加利上げ期待: ベッセント氏が以前、日本の金利上昇が米市場に影響していると言及した経緯もあり、日銀が次の一手をいつ打つかが相場を左右します。
- 政治と実務の温度差: ドル安を喜ぶトランプ大統領と、市場安定を重んじるベッセント財務長官の「二つの声」に、市場は引き続き翻弄されることになりそうです。
まとめ:投資家は「事実」を確認するまで止まらない
今回の騒動は、市場の「期待」がいかに暴走しやすく、そして「公式発言」がいかに冷酷にその熱を冷ますかを証明しました。
154円台に乗ったことで、再び輸入物価の上昇や私たちの生活への影響が懸念されます。週末にかけて米雇用統計などの重要指標も控えており、ドル円相場からは一瞬も目が離せない状況が続きそうです。