2024年秋、特定の巨大地震発生後に運用されていた「後発地震注意情報」が運用を終了しました。この情報は、大規模な地震が発生した後、**「さらに大きな地震(後発地震)が発生する可能性がある」**として、住民に注意を促すために導入されたものです。
しかし、この情報が終了したからといって、「もう大きな地震の心配はない」というわけでは決してありません。
この記事では、この「後発地震注意情報」が何だったのか、なぜ終了したのか、そして情報終了後も私たちが忘れてはいけない**「本当の地震リスク」**と、具体的な備えについて詳しく解説します。
🚨 「後発地震注意情報」とは何だったのか?
1. 情報の目的と対象
この情報は、特に南海トラフ巨大地震のような連動型の巨大地震を念頭に置いて運用されました。巨大な地震(前震)が起きた後、その数日から数週間後に、さらに大きなマグニチュード(M)の地震(本震、または後発地震)が同じ断層域や周辺で発生する可能性が、統計的・科学的に高まる期間が存在します。
この期間に、気象庁が「後発地震注意情報」を発表し、住民に対して「通常の地震への備え」に加えて、**「家具の固定の見直し」「避難経路の再確認」**といった、より高いレベルでの警戒を呼びかけました。
2. なぜ運用が終了したのか?
運用が終了した背景には、主に以下の理由があるとされています。
- 避難行動への結びつきの難しさ: 情報が発表されても、具体的にどのような行動を取ればよいかが住民にとって曖昧で、必ずしも効果的な避難行動に繋がらなかったという課題が指摘されました。
- 長期化による慣れ: 情報の性質上、注意期間が長くなることもあり、住民が**「慣れ」**てしまい、警戒感が薄れてしまうリスクが懸念されました。
- 科学的知見の進化と整理: 地震学的な知見の整理が進み、この情報がなくても、既存の地震情報や防災情報で対応すべきという整理に至ったと考えられます。
🌊 「リスクがなくなったわけではない」の真意
「後発地震注意情報」は終了しましたが、これは**「巨大地震のリスク自体がゼロになった」**ことを意味するものではありません。
1. 巨大地震の発生確率は常に存在する
日本列島は、複数のプレート(岩盤)の境界に位置しており、地震の発生は宿命的です。情報が終了した後も、南海トラフ巨大地震や首都直下地震など、発生確率が高いとされる巨大地震のリスクは、長期評価に基づき依然として高いままです。
- 具体例:南海トラフ地震
- 後発地震注意情報がなくても、今後30年以内にM8~9級の巨大地震が発生する確率は、依然として70~80%程度(政府の地震調査研究推進本部による)と非常に高い水準にあります。
2. 地震は前触れなくいつでも起こりうる
後発地震注意情報のような特殊なケースを除けば、ほとんどの地震は何の予兆もなく突然発生します。住民は、注意情報があるかどうかにかかわらず、常に地震が起こりうるという前提で生活することが不可欠です。
🛡️ 情報終了後も私たちがすべき具体的な備え
「後発地震注意情報」に頼らず、常時、以下の備えを徹底することが重要です。
| 備えのカテゴリー | 具体的な行動例 | 理由 |
| 🏠 事前対策 | 家具の固定(転倒防止対策)、避難経路の確保、窓ガラスの飛散防止フィルム貼り付け。 | 発生時の人的被害の約3~5割は家具の転倒・落下によるものとされています。 |
| 🎒 避難用品 | 非常持ち出し袋(水、食料、常備薬、ラジオ、充電器など)を玄関や寝室に用意し、年2回は点検する。 | ライフラインが途絶した場合、**最低3日間(推奨7日間)**を自力で生き抜くための備えです。 |
| 👨👩👧👦 家族の確認 | 安否確認の方法(災害用伝言ダイヤル171、SNSなど)と、避難場所を家族で共有する。 | 災害発生直後は電話が繋がりづらくなります。集合場所を決め、無駄な移動を防ぎます。 |
| 🗺️ 地域との連携 | ハザードマップを確認し、自宅周辺の浸水リスクや土砂災害リスクを把握する。地域の防災訓練に参加する。 | 自宅周辺の地域特有のリスクを知り、適切な避難行動を事前にシミュレーションできます。 |
✍️ まとめ:日常が防災
「後発地震注意情報」の終了は、防災対策の緩和を意味するものではありません。むしろ、**「個人の防災意識を、特別な注意情報に依存せず、日常の中に組み込むべきだ」**というメッセージだと受け止めるべきです。
「いつか来る」巨大地震に備え、今日からできる対策を一つずつ実行していくことが、最も確実な命を守る行動です。