「少子化の原因は、晩婚化や女性の社会進出…」
ニュースや議論でよく耳にするこれらの言葉に、あなたは本当に納得していますか? もちろん、それらも少子化の要因の一つかもしれません。しかし、もっと根源的で、目を背けてはならない真実が、私たちの社会の深部に潜んでいるのではないでしょうか。
それは、**「安定した職業」「生活できる給料」「ほんの少しのゆとり」**という、かつては当たり前だったはずの基盤が、現代社会においていかに脆弱になっているか、という現実です。この土台の崩壊こそが、若者たちが結婚や子育てに踏み切れない最大の理由なのに、なぜかその本質的な問題に正面から向き合う声は少ないように感じます。
本日は、この「誰も言わない真実」について、深く掘り下げていきたいと思います。
なぜ「安定した職業」が失われたのか?
かつて、日本社会は終身雇用制度に支えられ、一度入社すれば定年まで安定した職を得られるという安心感がありました。しかし、グローバル競争の激化、技術革新の加速、そして企業のコスト削減志向の高まりなどにより、この構造は大きく変容しました。
- 非正規雇用の拡大: 派遣社員、契約社員、パート・アルバイトといった非正規雇用が増加し、雇用の不安定さが増しています。これでは、将来設計を描くこと自体が困難です。
- 成果主義の導入と雇用の流動化: 実力主義は聞こえが良いですが、裏を返せば、常に結果を出し続けなければ職を失うリスクと隣り合わせであることを意味します。
- リストラの常態化: 景気変動や企業の経営判断によって、予告なしに職を失う可能性が常に存在します。
このような雇用の不安定さは、若者たちの将来への不安を増大させ、「結婚して家庭を築く」「子供を育てる」といった長期的なライフプランを躊躇させる大きな要因となります。
なぜ「生活できる給料」が得られないのか?
安定した職業に就けたとしても、それが「生活できる給料」でなければ意味がありません。しかし、現代の日本では、多くの若者がその壁に直面しています。
- 賃金の伸び悩み: 長期にわたる経済の低迷により、若年層の賃金はなかなか上昇せず、物価上昇に追いつかない状況も珍しくありません。
- 社会保険料や税負担の増加: 少子高齢化が進む中で、現役世代の社会保険料や税負担は増加の一途を辿り、可処分所得を圧迫しています。
- 将来への不安による貯蓄志向: 先行き不透明な社会情勢の中で、将来のために貯蓄を優先せざるを得ない若者が増え、消費に回せるお金が限られています。
「ワーキングプア」という言葉が示すように、フルタイムで働いても満足な生活を送ることができない若者が増えている現状は、結婚や子育てにかかる経済的な負担を考えると、二の足を踏むのは当然と言えるでしょう。
なぜ「ほんの少しのゆとり」すら失われたのか?
安定した職業と生活できる給料があったとしても、日々の生活に「ほんの少しのゆとり」がなければ、精神的にも肉体的にも疲弊し、子育てどころではありません。しかし、現代社会は、この「ゆとり」すらも奪い去ろうとしています。
- 長時間労働の常態化: 人手不足や業務効率の悪さなどから、長時間労働が蔓延し、プライベートな時間を確保することが困難な状況が多くの職場で見られます。
- 通勤時間の長期化: 都市部への人口集中により、通勤時間が長くなり、貴重な時間を浪費している人も少なくありません。
- 情報過多による精神的な疲労: SNSやインターネットから常に情報が流れ込み、心身ともに休まる暇がないと感じる人もいるでしょう。
このような状況下では、自分のことで精一杯になり、他者との関係を築いたり、新しい命を育むためのエネルギーや時間的な余裕を持つことが難しくなってしまいます。
なぜ誰も本当のことを言わないのか?
これほどまでに明白な少子化の根本原因である「安定した職業、生活できる給料、ほんの少しのゆとり」の崩壊について、なぜ社会全体として真剣に向き合おうとしないのでしょうか? その背景には、様々な要因が考えられます。
- 既得権益層の抵抗: 現在の社会構造の中で恩恵を受けている層にとっては、抜本的な改革は自身の利益を損なう可能性があるため、現状維持を望む力が働くことがあります。
- 問題の複雑さと根深さ: これらの問題は、単一の政策で解決できるほど単純ではなく、経済構造、社会システム、働き方、価値観など、多岐にわたる要素が複雑に絡み合っています。そのため、正面から取り組むには大きな労力と時間を要します。
- 短絡的な議論への偏り: 晩婚化や女性の社会進出といった、比較的議論しやすい表面的な要因に焦点が当てられがちで、本質的な問題への深い議論が避けられている可能性があります。
- 将来世代への責任感の欠如: 目先の経済成長や個人の利益を優先するあまり、将来世代が直面するであろう困難に対する想像力や責任感が欠如しているのかもしれません。
- 諦めや無力感の蔓延: 長期的な問題に対して、個人の力ではどうにもならないという諦めや無力感が広がり、声を上げること自体を諦めてしまっている人もいるかもしれません。
今こそ、真実の声に耳を傾けるべき
少子化は、単なる人口減少の問題ではなく、社会の活力低下、経済の縮小、そして何よりも、未来を担う世代の希望を奪う深刻な問題です。
「安定した職業、生活できる給料、ほんの少しのゆとり」を取り戻すことなくして、少子化の根本的な解決はありえません。そのためには、既得権益に囚われず、痛みを伴う改革も厭わない覚悟が必要です。
私たち一人ひとりが、この「誰も言わない真実」に目を向け、声を上げ、社会全体で真剣に議論し、行動していくことこそが、未来への希望を繋ぐ唯一の道なのではないでしょうか。