はじめに

「教育は国の礎」とよく言われます。ですが、その教育に綻びがあると、数十年後の社会全体に深刻な影響をもたらします。現在の日本社会には、「教育の失敗」とも言える事象があちこちに見られます。本記事では、いくつかの具体例を取り上げながら、どこで何を誤ったのか、そしてどんな対策が今必要なのかを掘り下げていきます。


1. 詰め込み教育と応用力の欠如

具体例:PISAテストの読解力低下

文部科学省も参加しているOECDの「PISAテスト」で、日本の高校生の読解力が2018年以降、急激に低下したことが問題視されました。特に「文脈から情報を推測する」ような設問での正答率が著しく低いのです。

これは、知識を一方的に覚えさせるだけで、「なぜそうなるのか」「どう応用するか」を教えてこなかった日本の詰め込み型教育の弊害といえるでしょう。


2. 「正解主義」が育てた指示待ち人間

具体例:職場での“自分で考えられない若手”

企業の人事担当者からよく聞かれるのが「最近の若者は自分で考えて動けない」という嘆きです。上司が指示しないと動けない、マニュアルがないと手をつけられない――。

これは小学校から大学まで、ずっと「正解は何か?」だけを求めてきた結果です。「失敗してもいいから自分で考える」「答えのない問いに取り組む」といった訓練が圧倒的に不足しているのです。


3. 個性を潰す均一化教育

具体例:画一的な進路指導で才能を埋もれさせる

全国の中学校・高校では、未だに「偏差値」や「大学進学率」を重視する進路指導が主流です。その結果、音楽や芸術、スポーツ、起業など、学問以外の才能を持った生徒がその芽を潰されてしまう事例が後を絶ちません。

たとえば、北海道のある高校では、声優を志す生徒に「そんなのは夢物語」と進学を強制し、結局本人が不登校になったという例もあります。


4. デジタル教育の遅れ

具体例:GIGAスクール構想の実態

2020年にスタートしたGIGAスクール構想。すべての児童生徒に1人1台タブレット端末を配布しましたが、教員のITリテラシー不足、アプリの使いこなしの差、通信環境の不平等など、運用面では大きな問題を抱えています。

「与えただけ」で終わり、効果的な活用や指導方法が浸透していない現場が多く、「ハード整備だけして教育は変わらなかった」と言われています。


5. 教員の疲弊と“教える力”の低下

具体例:部活、書類仕事で深夜まで働く教員

日本の教員は、世界一多忙です。部活動の顧問、授業準備、生活指導、保護者対応、校務分掌…どれも減らせず、深夜まで働くのが当たり前。

その結果、授業に集中できない、自己研鑽の時間が取れない、離職率が高まる――。つまり「教えるプロ」であるべき教員が、最も教える時間と余裕を失っているのです。


おわりに:教育の「アップデート」が急務

今、必要なのは「教育の本質」を問い直すことです。

  • 詰め込みよりも思考力
  • 正解よりも試行錯誤
  • 一律よりも多様性
  • 「覚える」から「考える」への転換

こうした視点がなければ、社会はますます硬直化し、若者が未来に希望を持てない国になってしまいます。教育は“今すぐ”変えなければ、10年後の社会に取り返しのつかないツケを残すことになるのです。

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