自民党の新執行部が発足し、高市早苗総裁の下で新体制が動き出した直後、公明党が突如として「連立離脱も辞さない」と強気の姿勢を示した。だが、この一言の裏には、長年「勝ち馬」に乗り続けてきた公明党の“選挙戦略”と“現実主義”が見え隠れしている。果たして今こそ、自民党の側から「連立解消」を切り出すべき時ではないのか――。
■「連立離脱も辞さない」強硬姿勢の背景
2025年10月、自民党の新総裁に高市早苗氏が就任すると、公明党の山口那津男代表(あるいは後継新代表)が記者会見で次のような発言をした。
「我々は国民の声に真摯に応える責任がある。自民党の政策方針が合致しないのであれば、連立離脱も辞さない」
この発言は、自民党内でも「脅しだ」「交渉カードだ」と波紋を呼んだ。実際、これまでも公明党は重要な局面で“連立解消”をちらつかせて自民党側に譲歩を迫ってきた。たとえば、以下のような事例がある。
- 2021年:選挙協力をめぐって自民党が候補者調整を拒否すると、「このままでは連立を見直す」と牽制。最終的に自民党が譲歩。
- 2023年:防衛費増額法案の審議で、「公明党の主張が反映されなければ賛成できない」と圧力。結果、防衛費財源の一部が修正された。
このように、公明党は長年、「連立解消カード」をちらつかせて自民党から政策面・選挙面の“譲歩”を引き出してきた。今回も、その延長線上とみられる。
■「勝ち馬に乗る」ことに徹してきた公明党の本質
公明党の本質をひと言で言えば、「勝ち馬主義」に尽きる。これは、政策的な理想を追求するよりも、常に“政権与党の一角”にとどまり続けることを最優先してきた姿勢を意味する。
その象徴的な例が、2009年の民主党政権誕生時だ。自民党が下野した直後、公明党は自民党との関係をいったん“冷却”し、民主党との接触を模索。実際、当時の党幹部が「どの政権とも協力する用意はある」と発言していたことは記憶に新しい。
また、2021年の衆院選では、自民党が単独過半数の確保に黄信号が灯ると、すかさず「野党とも政策協議を行う」との姿勢をにじませた。結果的に自民党が過半数を維持したことで“手のひら返し”をしたが、このような動きは一度や二度ではない。
■“票の人質”としての公明党の存在
連立関係を続ける最大の理由は、自民党にとって「選挙」だ。公明党の組織票は全国で約600万〜700万票と言われ、接戦区ではその数が当落を左右する。
たとえば、2021年の衆院選では、自民党候補が小選挙区で勝利した約30選挙区が「公明票なしでは落選確実」と分析されている。
このため、自民党は「多少の譲歩」を強いられてでも連立を維持してきた。裏を返せば、公明党は“票の人質”として、与党内での影響力を保持してきたのである。
■高市新総裁で変わる構図 「自民が主導権を握る時」
しかし、今回の状況は過去と異なる。
高市政権の誕生後、自民党内には「もはや公明党に選挙で頼りすぎている」との声が強まっている。特に若手・中堅議員の間では、次のような意見が広がっている。
- 「選挙協力なしでも勝てる地盤を作らないと、党の未来はない」
- 「譲歩を続ける限り、公明党に政策主導権を握られ続ける」
事実、自民党の最新の内部調査では、単独過半数に“ギリギリ届く可能性”が見えてきており、「連立を切っても政権は維持できる」との見方もある。
■「自民から解消を」求める声が出ている理由
こうした状況の中で、「自民党の方から連立解消を申し入れるべきだ」という声が急速に広がっている。理由は主に3つある。
- 政策の自由度が広がる
公明党に配慮してきた結果、防衛費・教育・憲法改正などの重要政策が骨抜きになってきた。連立解消により、自民党本来の政策を自由に進められる。 - 選挙協力依存からの脱却
今後も“組織票頼み”を続ける限り、自民党の足腰は強くならない。あえて厳しい選挙に挑むことで、党の自力回復が図れる。 - 「脅し外交」に終止符を
公明党が常套手段としてきた“連立離脱カード”に屈する必要がなくなり、真の対等な政治関係を築ける。
■まとめ:「勝ち馬主義」からの卒業を
公明党は長年、「常に勝ち馬に乗る」ことで生き延びてきた。しかし、それは国民のための政治というより、「政権の一角に居続けるための政治」だったのではないか。
連立政権は本来、政策理念を共有する政党同士が「協力」するものだ。だが、政策よりも選挙のため、理念よりも票のためという関係が続く限り、政治は前に進まない。
今こそ自民党は「票の人質」に屈する政治をやめ、自らの力で信を問うべき時に来ている。たとえ一時的に議席を減らすとしても、それは「自立した政党」としての第一歩となるはずだ。
“勝ち馬”を乗り換え続ける政党と手を組み続けるのか――。それとも、自らが「勝ち馬」となる道を選ぶのか。決断の時は、すぐそこに来ている。