東京29区は、前回の区割り改定で誕生した新しい選挙区です。「荒川区」全域と「足立区」の西部(東武伊勢崎線より西側のエリア)で構成されていますが、この2つのエリアには決定的な「差」が存在します。
1. 「7:3」のボリュームゾーン:勝敗は足立で決まる
選挙の勝敗を決めるのは、何よりも「票の数」です。東京29区の有権者比率を具体的に見てみましょう。
- 足立区側(西部):約18万人
- 荒川区側(全域):約16万人 (※2026年現在の概算数値)
数値上は拮抗しているように見えますが、実情は異なります。荒川区は地域の一体感が強く票がまとまりやすい反面、足立区西部は人口密集地であり、かつて「公明党・維新・自民」が激しくしのぎを削ってきた**“浮動票の火薬庫”**です。
具体例: 荒川区で5,000票の差をつけても、足立区で1万票まくられれば即座に逆転します。候補者が荒川区の商店街を練り歩く時間の3倍を、足立区のマンモス団地や駅頭に割かなければならないのは、この「人口ボリュームの壁」があるからです。
2. 足立区で問われる「生活実感」と「手取り」
足立区西部の有権者が最も敏感に反応しているのが、物価高と可処分所得の問題です。
- 具体例:国民民主・たるい氏の戦略 足立区の現役世代に向けて「手取りを増やす」という一点突破の政策を連呼。日暮里・舎人ライナー沿線の新興住宅層に対し、「荒川の伝統」よりも「足立の家計」に刺さる言葉を投げかけています。これが、既存の組織票を揺さぶる大きな要因となっています。
3. 「組織」が強い足立、「無党派」の荒川
今回の激戦を象徴するのが、自民・長澤氏と中道改革連合・木村氏の争いです。
- 自民・長澤氏の具体例: 長澤氏は元足立区議という最強のバックボーンを持っています。足立区の隅々まで張り巡らされた町会や組織のルートは、いわば「ホームグラウンド」。荒川区での知名度不足を、足立区での圧倒的な組織固めでカバーし、逃げ切りを図る戦略です。
- 中道改革連合・木村氏の具体例: 旧・公明票の支援を受ける木村氏にとって、足立区は「伝統的に強い組織票」が眠る場所。しかし、今回の合流による混乱で、足立区の公明支持層がどこまで付いてくるかが不透明です。ここを取りこぼせば、荒川区でいくら支持を広げても勝利は遠のきます。
4. 最後に笑うのは「舎人ライナー」の乗客を掴んだ者
足立区西部の象徴的なエリア、それは「日暮里・舎人ライナー」沿線です。ここは都心へ通勤する30〜40代のファミリー層が急増しているエリア。
- 必勝の具体例: 「舎人公園駅」や「西新井大師西駅」などの駅前で、どれだけ「足立区の未来」を具体的に語れるか。荒川区の伝統的な祭りの話をしても、新しく足立に住み始めた若年層には響きません。彼らが求めているのは、足立区内の子育て支援や、通勤利便性の向上です。
結論:東京29区の「重心」は足立にある
荒川区は「安定の地盤」、足立区は「激変の戦場」です。 候補者たちが荒川区で握手をしつつ、目は常に足立区の情勢を追っているのは、**「足立区で数千票の差をつけられたら、荒川区では取り返せない」**という現実があるからです。
投開票日の夜、足立区の開票速報でどちらがリードするか。それこそが、東京29区の新しい代表が決まる瞬間となります。