2025年10月期のテレビアニメ新シーズンが続々とスタートするなか、今期は例年と大きく異なるトレンドが話題を呼んでいます。それが「海外発のオリジナルアニメ・共同制作作品」の急増です。中国・韓国・北米など、海外発の作品が少なくとも6本放送・配信予定となっており、「もはや“日本だけのアニメシーズン”ではなくなった」と専門家も指摘しています。ここでは、今期の特徴や代表的な作品、そして背景にあるアニメ産業の変化を詳しく解説します。
■ “日本アニメの季節”が一変 今期は海外勢が席巻
例年、10月クールは『呪術廻戦』『進撃の巨人』『僕のヒーローアカデミア』など、国内大手スタジオが手がける大型作品が中心となっていました。
しかし2025年秋は、これまで脇役的な存在だった海外作品が一気に存在感を増しています。テレビ放送・配信を合わせて6本が登場予定で、なかには“海外制作主導”でありながら、日本の地上波でゴールデン帯に放送される作品もあるほどです。
■ 注目の“海外発アニメ” 代表例と特徴
ここでは、今期特に注目を集める作品をいくつかピックアップして紹介します。
①『霊剣伝 -The Spirit Blade-』(中国)
中国の人気Web小説を原作としたファンタジー作品。テンセント傘下のアニメ制作会社「企鹅影業」が主導し、アニメーション制作の一部は日本のスタジオが担当しています。
もともと中国国内の配信で累計再生数10億回を突破しているヒット作で、日本での地上波放送は今回が初。キャラクターの作画や演出に日本流の手法が取り入れられ、従来の“中華アニメ”よりも日本の視聴者になじみやすい仕上がりとなっています。
②『Karma Code』(韓国)
韓国Netflixオリジナルから派生したSFアクション。制作はソウルのアニメ制作会社「STUDIO MIR」で、『伝説の勇者の伝説』『DOTA: Dragon’s Blood』などで知られる実力派です。
本作は、人工知能が人間社会を管理する近未来を舞台に、記憶操作によって“理想の市民”へと作り替えられる人々の葛藤を描くハードな社会派作品。日本語吹き替え声優には内田雄馬や早見沙織といった人気声優が参加し、日本市場への本格進出がうかがえます。
③『StarForge -星の鍛冶師-』(北米)
アメリカの新興スタジオ「Aurora Animation」による完全オリジナルアニメ。日本のアニメ文化へのリスペクトが随所に込められており、作画監督には元スタジオジブリのアニメーターも参加しています。
SFとスチームパンクを融合させた世界観と、主人公が“星の金属”を鍛えることで戦うという独特の設定が話題です。海外作品でありながら、日本のテレビ東京系列で深夜アニメ枠に登場する点も異例といえます。
■ なぜ今、海外アニメが増えているのか?
この“海外発アニメラッシュ”の背景には、アニメ業界の国際化とプラットフォームの多様化があります。
- 世界的な需要の急増
『鬼滅の刃』や『スパイファミリー』の世界的ヒットをきっかけに、アニメ市場は今や約3.7兆円(2024年時点)規模にまで拡大。海外企業も本格的な投資を始め、日本と肩を並べるレベルの作品が生まれています。 - 共同制作モデルの一般化
制作費高騰と人材不足を背景に、日中韓など複数国が制作を分担するケースが増加。制作コストの分散とグローバル展開の両立が図られています。 - 配信プラットフォームの影響
NetflixやDisney+、Bilibiliなどが“自社独占アニメ”として海外作品を投入。地上波放送だけでなく配信同時展開を前提とした作品が増えており、日本の視聴者にも自然に届くようになりました。
■ 「日本人だけが観る時代は終わった」アニメのグローバル化
今回の秋アニメのラインナップは、アニメ業界の“地殻変動”を象徴するものです。
もはやアニメは「日本人だけのもの」ではなく、世界中のクリエイターとファンが交差する国際的なエンターテインメント産業へと進化しています。海外の作り手が日本市場に挑戦し、日本のファンもそれを受け入れる——そんな「新しいアニメの時代」が、2025年秋から本格的に幕を開けました。
■ まとめ
2025年秋クールは、かつてないほど“海外発”アニメが台頭するシーズンとなっています。
中国・韓国・北米など、多様な背景を持つ作品が日本市場を意識し、質の高いアニメーションで勝負をかけてきているのです。今後、こうした流れはさらに加速し、「国籍でアニメを分類する意味がなくなる」時代がやってくるかもしれません。
日本発のアニメが世界を席巻してきたように、世界のアニメが日本を驚かせる――その潮流は、すでに始まっています。