2025年4月、大企業に勤める皆さんの給与明細を見て、驚かれた方もいるのではないでしょうか?多くの企業で、健康保険料率が9.34%と過去最高水準に引き上げられたのです。

政府や企業が賃上げを推進する中で、なぜこのような事態が起こり、私たちの手取りにどのような影響を与えるのでしょうか?本記事では、具体的な事例を交えながら、健康保険料率引き上げの背景、賃上げ効果が薄れるメカニズム、そして私たちにできる対策について詳しく解説します。

なぜ健康保険料率は上昇しているのか?その背景にある構造的な問題

健康保険料率の上昇は、一時的なものではなく、日本の医療保険制度が抱える構造的な問題が複合的に影響した結果と言えます。

1. 高齢化による医療費の増大

日本は世界でも有数の高齢化社会であり、高齢者の医療費は現役世代のそれを大きく上回ります。団塊の世代が後期高齢者となる2025年以降、この傾向はさらに加速すると見込まれています。

具体例:

  • 70歳以上のAさんの場合、風邪で病院にかかった際の医療費の自己負担割合は原則2割(一定所得以上は3割)ですが、残りの大部分は健康保険から支払われます。
  • 80歳で複数の慢性疾患を抱えるBさんの場合、入院や頻繁な通院が必要となり、年間数百万円の医療費が健康保険から支払われることがあります。

2. 現役世代の減少と保険加入者の負担増

少子化によって現役世代の人口が減少し、健康保険の加入者数も減少しています。一方で、医療費は増大の一途を辿るため、結果的に一人当たりの保険料負担が増加する構造となっています。

具体例:

  • 1990年には、約5人の現役世代で1人の高齢者を支えていましたが、2025年には約2人で1人を支えるようになると推計されています。
  • 健康保険組合の加入者数が減少し、医療費の支出が増加した結果、保険財政が悪化し、保険料率の引き上げを余儀なくされたC健康保険組合の事例。

3. 医療技術の高度化と薬剤費の高騰

高度な医療技術や高額な新薬の開発により、病気の治療選択肢が増える一方で、医療費全体が押し上げられています。

具体例:

  • 画期的な効果が期待できるがん治療薬Dは、年間数百万円の費用がかかることがあります。
  • 手術支援ロボットEを導入した病院では、より精密な手術が可能になる一方で、その導入・維持コストが医療費に反映されることがあります。

健康保険料率9.34%が賃上げ効果を薄めるメカニズム

企業が従業員の賃上げを実施しても、健康保険料率の上昇によって、実際に従業員の手元に残る金額は減少してしまう可能性があります。具体的なケースで見てみましょう。

具体例:

  • ケース1:月給30万円のFさんの場合
    • 賃上げ前:月給30万円、健康保険料(9.1%)27,300円
    • 賃上げ後:月給31万円(3.3%増)、健康保険料(9.34%)28,954円
    • 手取り増加額:賃上げ1万円 – 保険料増加1,654円 = 8,346円
    • 実質賃上げ率:8,346円 / 30万円 = 2.78%
  • ケース2:月給50万円のGさんの場合
    • 賃上げ前:月給50万円、健康保険料(9.1%)45,500円
    • 賃上げ後:月給51.5万円(3%増)、健康保険料(9.34%)48,101円
    • 手取り増加額:賃上げ1.5万円 – 保険料増加2,601円 = 12,399円
    • 実質賃上げ率:12,399円 / 50万円 = 2.48%

上記の例からもわかるように、賃上げによって月給は増えたものの、健康保険料の増加によって、実際に手元に残る金額の伸びは、賃上げ率を下回っています。特に高所得者層ほど、保険料の絶対額が増加するため、賃上げ効果が薄れる影響は大きくなります。

他の社会保険料も上昇傾向に

健康保険料だけでなく、厚生年金保険料や雇用保険料なども、社会情勢や制度改正によって変動します。これらの社会保険料も上昇傾向にあるため、賃上げの効果をさらに押し下げる可能性があります。

具体例:

  • 厚生年金保険料率は、段階的に引き上げられており、今後も上昇する可能性があります。
  • 雇用保険料率は、雇用情勢によって変動し、失業者が増加すると引き上げられることがあります。

私たちが取るべき対策:家計防衛のために

健康保険料率の上昇や社会保険料の負担増は、私たちの家計に直接的な影響を与えます。賃上げ効果を最大限に活かし、家計を守るために、以下のような対策を検討しましょう。

1. 無駄な支出の見直しと節約

固定費(通信費、保険料、住宅ローンなど)や変動費(食費、光熱費、娯楽費など)を見直し、無駄な支出を削減することで、手取りの減少分をカバーすることができます。

具体例:

  • 格安SIMへの乗り換えで、月々の通信費を数千円削減できたHさん。
  • 電力会社のプランを見直し、年間数万円の電気代を節約できたIさん。
  • 外食の頻度を減らし、自炊中心の生活に切り替えたJさん。

2. 資産形成の加速と将来への備え

NISAやiDeCoなどの税制優遇制度を活用し、効率的に資産形成を行うことで、将来の経済的な不安を軽減することができます。

具体例:

  • 毎月コツコツとNISAで積立投資を行い、将来の教育資金を準備しているKさん。
  • iDeCoを活用して老後資金を積み立て、税制上のメリットを享受しているLさん。

3. 副業やスキルアップによる収入増

本業以外に副業で収入を得たり、スキルアップによって本業での昇給を目指すことも、手取り減少をカバーする有効な手段です。

具体例:

  • 週末に得意なWebデザインの副業を始め、月数万円の収入を得ているMさん。
  • 業務に必要な資格を取得し、昇給を果たしたNさん。

まとめ:構造的な問題と向き合い、賢く家計を守ろう

大企業社員の健康保険料率が過去最高となった現実は、賃上げ効果を打ち消し、私たちの家計に大きな影響を与えます。この問題は、高齢化や医療費増大といった構造的な要因が背景にあり、今後も同様の 傾向が続く可能性も否定できません。

重要なのは、現状を正しく理解し、無駄な支出の見直し、資産形成の推進、収入増のための努力など、私たち自身ができる対策を講じることです。賢く家計を守り、将来への不安を少しでも軽減していきましょう。

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