2025年8月22日、九州に接近していた台風12号は、日本の南の海上で熱帯低気圧に変わりました。ニュースを見て「ああ、もう安心だ」と思った方も多いかもしれません。しかし、気象庁は引き続き九州地方に大雨への厳重な警戒を呼びかけています。

なぜ、台風が「熱帯低気圧」に変わっても危険は続くのでしょうか?その理由を、具体例を交えて解説します。

台風と熱帯低気圧の違いとは?

まず、台風と熱帯低気圧の定義を簡単に見ていきましょう。

  • 熱帯低気圧:熱帯の海上で発生する、発達途中の低気圧。
  • 台風:熱帯低気圧のうち、中心付近の最大風速が17.2m/s以上になったもの。

つまり、台風は熱帯低気圧がさらに発達したものであり、**熱帯低気圧は台風の”赤ちゃん”**のような存在です。そして、今回の台風12号が熱帯低気圧に変わったというのは、勢力が弱まり、最大風速が17.2m/sを下回ったことを意味します。

勢力が弱まっても、危険なワケ

「風が弱くなったなら、もう大丈夫じゃないか」と思われるかもしれません。しかし、ここが一番重要なポイントです。

1. 湿った空気が流れ込み続ける

台風のエネルギー源は、暖かい海面から供給される大量の水蒸気です。熱帯低気圧に変わっても、この湿った空気は引き続き日本の南から流れ込み続けます。

具体例:線状降水帯の発生リスク 湿った空気が九州の山にぶつかり、活発な雨雲が発生しやすくなります。この雨雲が次々と連なって同じ場所に停滞すると、線状降水帯が発生し、短時間で局地的な大雨をもたらす恐れがあります。実際に、これまでの台風や熱帯低気圧の接近・通過時にも、線状降水帯によって記録的な豪雨となり、土砂災害や河川の氾濫が発生した事例は数多くあります。

2. 総雨量が増え続ける

今回の台風12号は、動きが比較的ゆっくりでした。熱帯低気圧に変わった後も、ゆっくりとした速度で東へ進むため、九州地方では同じ地域で長時間にわたって雨が降り続く可能性があります。

具体例:24時間で平年の月間降水量を上回る すでに今回の台風の接近に伴い、鹿児島県日置市では24時間で平年8月1か月分の雨量を超える283.5ミリの雨が観測されました。熱帯低気圧に変わっても、この後さらに雨量が積み重なることが予想され、地盤の緩みや河川の水位上昇が懸念されます。

備えはまだ終わりではない!

台風が熱帯低気圧に変わったというニュースは、風の危険がひとまず収まったことを示唆していますが、大雨による災害リスクはむしろ高まる場合があります。

引き続き、気象情報や自治体からの避難情報をこまめに確認し、土砂災害や河川の増水、低い土地の浸水に厳重に警戒してください。決して「もう大丈夫」と油断することなく、安全を第一に行動してください。

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