これまで、校内でのトラブルは「教育的配慮」という名のもとに、学校内で完結させることが一般的でした。しかし、今回のように動画という**「動かぬ証拠」**がネットで全世界に晒されたことで、もはや教育界だけで抱え込める問題ではなくなっています。
1. 栃木と大分、それぞれの事案で見えた「共通の残虐性」
それぞれの地域で拡散された動画には、共通して非常に危険な暴行の様子が映し出されていました。
【大分のケース】馬乗りと「踏みつけ」
- 内容: 廊下で一方的に殴りかかり、相手が倒れた後も馬乗りになって顔面を殴打。さらに、最も危険とされる**「後頭部」への蹴り**や踏みつけが行われていました。
- 周囲の状況: 撮影者は笑いながら動画を回しており、暴力を「エンターテインメント(娯楽)」として消費している異様な光景が記録されていました。
【栃木のケース】教室内での「首絞め」と引きずり回し
- 内容: 自席に座っている無抵抗な生徒に対し、背後から首を絞めて床に引きずり倒す暴行。
- 拡散の速さ: Instagramの「ストーリーズ」(24時間で消える機能)に投稿されましたが、即座に保存・転載され、学校名や加害者の実名特定までが数時間のうちに行われました。
2. 「教育委」と「警察」が同時介入する深刻な理由
今回、両県の教育委員会が即座に「警察に相談・情報提供」を行ったのには、明確な理由があります。
- 「いじめ」ではなく「刑事事件」: 蹴りや殴打、首絞めといった行為は、法的には**暴行罪(刑法208条)や傷害罪(刑法204条)**に該当します。
- 証拠の隠滅防止: SNSの投稿は削除される可能性があるため、警察の捜査能力を借りて証拠を保全し、撮影者や拡散者の責任も追及する必要があります。
- ネット私刑の抑止: ネット上で「特定班」による過激なバッシング(加害者の家族や無関係な生徒への攻撃)が始まっており、警察が介入して公的な調査を進めることで、これ以上の混乱を防ぐ狙いもあります。
3. 具体例:なぜ「動画」は止められないのか?
現場の教師からは「限界だ」という悲鳴が上がっています。その背景にあるのが、現代特有の**「撮影バイアス」**です。
具体例:スマホというフィルターの罪 目の前で暴力が起きていても、スマホのカメラ越しに見ることで、生徒たちは「現実の出来事」としての重みを感じにくくなります。 「映画やドラマのワンシーンを撮っている」ような感覚で、被害者の痛みに対する想像力が麻痺してしまうのです。これが、誰も止めずに撮影を続けるという残酷な状況を生んでいます。
4. まとめ:私たちが直面している「新しい暴力」の形
栃木、大分での事案は、単なる地方のニュースではなく、日本のどの学校でも起こりうる問題です。
- 学校の対応: 「内密に解決」する時代は終わりました。今後は「即座の警察連携」がスタンダードになるでしょう。
- 家庭の役割: 子供に対し、「SNSに上げた動画は一生消えない(デジタル・タトゥー)」こと、そして「撮影し、拡散することも加害である」ことを、大人が本気で教え込む必要があります。
教育委員会のトップが記者会見で謝罪する事態となっていますが、本当に救われるべきは、今もネット上に自分の無様な姿が残り続けている被害生徒たちです。