はじめに
東京都心を守る「防災の要」、それが荒川です。
埼玉から東京湾へ流れる荒川は、首都圏を貫く大河川でありながら、実は氾濫すれば日本最大級の水害被害が出るとされている超危険地域。
今回は、巨大台風が東京湾を通過して荒川が氾濫した場合、どんな被害が出るのかを具体的にシミュレーションしながら詳しく解説します。
1. 荒川は「日本一危ない川」とも言われている
■ 荒川の基本情報
- 全長:173km(埼玉県秩父市~東京都江東区)
- 管理対象人口:約1200万人(日本人口の約10%)
- 両岸には板橋区・北区・足立区・荒川区・江戸川区・墨田区など、多数の住宅密集地が広がる
■ なぜ危険?
- 東京下町エリアは海抜ゼロメートル地帯
- 荒川本流が堤防を越えた場合、水は自然と都心方向に流れ込む
- 特に東部低地帯は一度水に浸かると、排水に数週間かかる
2. 巨大台風が荒川に与える影響とは
■ 首都直撃シナリオ(国交省想定)
- 東京湾から上陸する最大風速60メートル以上の台風が、荒川流域に記録的な大雨をもたらす
- 72時間雨量が600ミリ超え、すでに堤防の限界を超える水位に
■ 荒川氾濫の具体的影響
- 堤防の一部が決壊 or 越水した場合、墨田区・江東区・足立区・葛飾区などで3m以上の浸水想定
- 水深最大10m、2階建て家屋が完全に水没する地域も出る
- 広さで言えば東京ドームおよそ6000個分の範囲が浸水
3. 実際にどこが危ないのか?
■ 被害が想定されるエリアの例
- 江戸川区東部(新小岩・篠崎周辺):最深部では6〜9mの浸水想定
- 足立区西部(梅島・西新井周辺):5〜7mの浸水想定
- 墨田区・江東区の一部(亀戸・大島):3〜5mの浸水が最大7日間以上残る可能性
- 地下鉄東西線・都営新宿線・JR総武線など:地中からの浸水で長期運休のリスク
4. 被害の規模と社会的影響
- 国交省の試算では、最大で230万人が自宅から避難を余儀なくされる
- 浸水家屋:約100万戸以上
- 経済的被害は40兆円を超える可能性
- 首都機能(政治・経済・交通・通信)が完全に麻痺
- 携帯基地局や電力施設が浸水すれば、数百万人が情報難民に
5. 過去の実例と今後の警告
■ 2007年・2008年の台風接近時
荒川上流の水位が急上昇し、あと30cmで緊急放流のレベルに達した事例も。
このときは台風の進路が逸れて事なきを得たが、もし台風が都心をかすめていたら氾濫していた可能性が高かった。
■ 国の対策は進んでいるが限界も
- 大規模な防災地下調整池(首都圏外郭放水路など)が建設済み
- それでも1時間100mmを超えるような豪雨の連続には対応しきれない恐れ
6. 私たちがすべき“今”の備え
■ 荒川氾濫ハザードマップの確認
- 各自治体(江戸川区、足立区、墨田区など)が公表しているマップをチェック
- 自宅や職場が「想定浸水区域」に入っていないかを確認することが第一歩
■ 高層階避難・早期避難の意識
- 水位が高くなる地域では「横に逃げる」ではなく「上に逃げる」選択も検討
- 水害は発生後ではなく発生前に避難を完了させることが基本
■ 非常持ち出し袋と備蓄
- 飲料水、食料、モバイルバッテリー、簡易トイレなどを1週間分
- 特に水害は停電と断水が長期化しやすいため、電源と水の備蓄は必須
終わりに:荒川の氾濫は“現実に起こりうる最悪のシナリオ”
荒川の氾濫は、決して「映画や小説の中の話」ではありません。
温暖化と都市化が進んだ現代において、「まさか」が「いつか」に変わるリスクは年々高まっています。
東京都民、そして首都圏に暮らすすべての人にとって、荒川は日常と命を隔てる“最後の壁”です。
その壁が崩れたときの備え、あなたはできていますか?