スマートフォン1台で誰でも意見を発信できる時代。選挙シーズンになるとX(旧Twitter)やYouTube、TikTokでは政治的な投稿が急増します。「ネットでは●●党が優勢」などという声も見かけますが、それは本当に選挙結果に影響を与えているのでしょうか?本記事では、SNSの影響力が実際にどのように選挙結果を動かしているのか、国内外の具体例をもとに解説します。


1. ネット世論と「リアルな世論」の違いとは?

まず大前提として知っておくべきは、「ネットの声=国民の声」ではないということです。SNSに投稿する層は、若者や中高年の一部など比較的アクティブな層に偏っており、いわゆる“サイレントマジョリティ”(声を上げない多数派)の意見とは必ずしも一致しません。

しかし、その“偏った声”が現実の選挙結果に影響を与え始めているのも事実です。


2. 実例①:2019年 参院選での「山本太郎」旋風

れいわ新選組を立ち上げた山本太郎氏は、当時テレビにほとんど出ないにも関わらず、YouTubeやTwitter、街頭演説のライブ配信を活用し、ネットを中心に支持を拡大。結果的に重度障害者の候補2人が当選し、「れいわ現象」とも呼ばれました。

具体例:
山本氏の街頭演説動画がYouTubeで累計500万再生を超え、SNSでは「この人に投票したい」という声が急増。テレビでは報道されなかった政策内容が拡散され、既存メディアの影響力を凌駕する事例となりました。


3. 実例②:2021年 衆院選での「TikTok議員」誕生

若年層の関心が薄いと言われていた衆院選。しかしこの年、若手候補者たちはTikTokで自らの政策や人柄を発信し、若者票の獲得に成功。特に大阪や東京の一部では、動画発信のうまさが当選を左右したとも言われました。

具体例:
維新の会や無所属の若手候補が「TikTokで人気になった政治家」として注目され、同世代の支持を獲得。TikTok経由での街頭演説の参加者が増え、選挙期間中に“バズった”候補が当選するという現象が起こりました。


4. 実例③:2022年 参政党の“ネット発”の支持拡大

参政党は地上波テレビでの露出がほぼ皆無でしたが、YouTubeやニコニコ動画を駆使して街頭演説の様子を発信。党の公式YouTubeチャンネルは急速に登録者を伸ばし、2022年の参院選では1議席を獲得しました。

具体例:
渋谷や大阪での街頭演説の動画がSNSで拡散され、「こんなに人が集まっているのに、テレビは全く報じない」とネット上で話題に。選挙後、ネット選挙の成功例として分析されました。


5. SNSの「空気」が選挙に与える3つの影響

① 無党派層の“きっかけ”になる

SNSで拡散された動画や投稿が、「政治に興味がなかった人」の最初の入口になっています。特に街頭演説動画や“顔が見える”コンテンツは強く刺さります。

② メディア報道とのギャップが「反発」を生む

既存メディアが取り上げない政党や候補がSNSで話題になることで、「なぜ報じないのか?」という不信感が逆に支持を集めるケースも。

③ 拡散による“錯覚的多数派”

SNSで大量のポストを見ることで、「この候補が有利そうだ」と感じて票が集まる“バンドワゴン効果”が起きる可能性もあります。


6. 選挙戦略としてのSNS活用

今や候補者のSNS運用は「当たり前」になっています。政治的立場を超えて、多くの政党がSNSチームを組織し、候補者の日常・政策・街頭の様子などをリアルタイムで発信。選挙ポスターよりも「ショート動画」が影響力を持つ時代になりつつあります。


まとめ:ネットの力を“侮れない”時代へ

SNSは単なる意見交換の場ではなく、実際の投票行動を左右する“選挙戦の主戦場”になりつつあります。特に、テレビを見ない若者や政治不信層にとっては、SNSこそが“唯一の情報源”になるケースも珍しくありません。

参議院選挙を迎える今、SNS上の動向や空気感を読み解くことは、もはや無視できない時代に入ったと言えるでしょう。


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