はじめに

「正社員でフルタイム勤務、真面目に働いているのに生活が苦しい」
「将来が不安で結婚も子育ても考えられない」
こうした声が、今の日本社会で広がっています。

かつて「普通に働けば、普通に暮らせる」と言われていた日本。
しかし2025年の今、その“普通”がどんどん遠ざかり、多くの人が「もう無理ゲー」と感じています。

今回は、なぜ真面目に働いても報われないのか? その原因と、具体的な事例を交えて日本の今を掘り下げます。


1. 実質賃金が下がり続ける「貧困の罠」

厚生労働省の「毎月勤労統計調査(2025年5月速報)」によると、

名目賃金:前年比+1.3%
実質賃金(=物価を考慮した給与の実力):マイナス2.5%

つまり、「給料は上がっているように見えて、実際は生活水準が下がっている」という地獄のような状況です。
働けば働くほど、“暮らしが苦しくなる”という逆転現象が起きています。


2. 生活費が上がりすぎて、働いても足りない

2025年現在、あらゆるモノの値段が上がっています。

具体例:都市部のシングル世帯(30代・会社員)の生活費例

  • 家賃:8万円(都内ワンルーム)
  • 食費:4.5万円(外食ほぼなし)
  • 光熱費:1.8万円(エアコン・ガス代が急上昇)
  • 通信費:1.2万円
  • その他(交通費、雑費):1.5万円
    → 合計:約17万円

一方、手取り月収20万円〜22万円の人が多く、家賃を払えばほとんど残りません。
「スマホ代すら高い」「貯金どころじゃない」という若者も増加中です。


3. フルタイム勤務でもワーキングプアに

非正規だけではありません。正社員でも“貧困”状態に陥っている人は少なくありません。

具体例:地方で働く30代女性(正社員・年収280万円)

静岡県で介護職としてフルタイム勤務(週5日×8時間)、有給も少なく、賞与は年間10万円。
手取りは月18万円弱で、家賃と光熱費でほぼ消える。
「外食も旅行も無理」「老後のための貯金はゼロ」「毎月ギリギリ」と語っています。


4. 普通の暮らし=“ぜいたく”に

以前なら「普通」とされていた以下のような暮らしが、いまや“特別なこと”になりつつあります:

  • 年1回の国内旅行 →「そんな余裕ない」
  • 車を持つ →「維持費で破産する」
  • 結婚して家庭を持つ →「収入が足りない」
  • 子どもを育てる →「教育費が高すぎる」

国立社会保障・人口問題研究所の最新調査(2024年)では、

「将来、子どもを持ちたいと思わない」20代:62.5%
理由の最多は「経済的理由(生活が不安)」でした。


5. 税と社会保険料が“取りすぎ”になっている

給料明細を見ると、手取りの少なさにショックを受ける人も多いはず。
なぜなら、年々上がり続ける「社会保険料」や「住民税」の負担が、家計をじわじわ圧迫しているからです。

具体例:手取り20万円の内訳(30代独身会社員)

  • 健康保険・厚生年金:4.8万円
  • 所得税・住民税:1.8万円
    → 給与支給額25.5万円 → 手取り:約18.9万円

つまり、毎月6万円以上が天引きされているわけです。
その上で、医療費自己負担・年金不安・介護保険料負担まで背負わされているのが現状です。


6. 心もすり減る“見えないプレッシャー”

経済的な苦しさだけではありません。
「もっと頑張らなきゃ」「贅沢しちゃいけない」というプレッシャーが、心の余裕まで奪っています

具体例:心療内科を受診する働き世代の急増

2025年、都内心療内科での「うつ・適応障害」の診断件数は前年比1.4倍に。
医師のコメント:「原因の多くは“将来への慢性的な不安”です。仕事を失う不安、結婚できない焦り、将来の孤独への恐怖――日本社会は人を追い詰めています」


おわりに:“普通”が贅沢になる国、それが今の日本

もはや、「真面目に働けば報われる」という前提は崩壊しています。
むしろ、“普通に働く=貧困に向かう”という国になってしまったのです。

これは個人の努力不足ではなく、構造の問題です。
政治、雇用、税制度、すべてが“生活者の目線”から遠くなりすぎています。

だからこそ、いま必要なのは「おかしい」と声をあげること。
“普通に生きられる国”に戻すために、私たちは事実を見つめ、変化を求めるしかありません。

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