1. 中野サンプラザ「完全白紙」の衝撃
かつての成人式やコンサートの聖地、中野サンプラザ。2023年に閉館し、本来なら今ごろ巨大な複合ビルへの建て替えが進んでいるはずでした。しかし、2025年6月に中野区は事業者との協定解除を決定。計画は完全に白紙となりました。
- 事業費の暴走: 当初想定されていた整備費は約1,800億円でしたが、最新の試算では約2,600億円〜3,000億円近くまで跳ね上がったと見られています。
- ゼネコンの辞退: 莫大なコストとリスクを恐れ、施工を請け負うはずのスーパーゼネコンが次々と入札を辞退。中野区は2026年3月に新たな素案を出す予定ですが、かつての「高さ262mの超高層ビル」という夢は、大幅な下方修正を余儀なくされています。
2. 新宿駅前「グランドターミナル構想」にも暗雲
「迷宮」新宿駅を大改造する世紀のプロジェクトも、足元が揺らいでいます。
- 京王・小田急の苦悩: 新宿駅西口・西南口の再開発では、一部の街区で**「着工時期・竣工時期が未定」**となるエリアが出ています。京王電鉄の社長がインタビューで「工期未定の実情」を告白するなど、鉄道系ディベロッパーにとっても想定外の事態となっています。
- 進む解体、決まらぬ中身: 小田急百貨店の解体は進んでいますが、その後に建つビルの詳細や、複雑な地下通路の整備計画が、コスト高騰によって「今の設計では採算が合わない」という壁にぶつかっています。
3. なぜ「決まらない」? 3つのナゾを解く
東京中で再開発がストップしている理由は、単なる「景気の波」ではありません。
① 「建設コスト」がもはや計算不能
資材価格の高騰に加え、深刻な人手不足がゼネコンを直撃しています。「2024年問題」による労働時間規制で工期が延び、その分人件費も増大。見積もりを出すたびに数億円単位で価格が上がるため、ディベロッパーは判を押せない状態です。
② デジタル化による「オフィス需要」の変容
コロナ禍を経てテレワークが定着し、かつてのような「巨大オフィスビルを建てれば企業が入る」という方程式が崩れました。高額な賃料を設定しないと建築費を回収できないのに、借り手は慎重。このミスマッチが計画を足止めしています。
③ 不動産バブルの「飽和点」
これまで東京の再開発を支えてきたのは、海外からの投資マネーと超低金利でした。しかし、建築費がこれ以上上がると「投資しても利益が出ない」という飽和点に達しており、投資家が「東京離れ」を始めている兆しもあります。
4. まとめ:私たちは「空き地」の東京とどう向き合うか
今、中野や新宿で見ている光景は、戦後の高度経済成長期から続いてきた**「壊して、より高く建てる」というビジネスモデルの限界**かもしれません。
中野サンプラザの跡地がしばらく暫定的な「広場」として活用される検討がなされているように、これからは「高層ビル一辺倒」ではない、新しい都市開発の形が求められています。
「東京はもっと便利に、かっこよくなる」と信じていた私たちにとって、この“停滞”は、街の個性をどう守るべきかを問い直す時間になるのかもしれません。