JR東日本、推し活ブームと宿泊費高騰が追い風に
幻のブルートレイン、再び走る
かつて昭和から平成にかけて、日本の長距離移動を支えた夜行列車「ブルートレイン」。寝台特急「あさかぜ」「はやぶさ」「北斗星」など、多くの人の旅の思い出を彩った列車ですが、新幹線や航空機の普及とともに次々と廃止されていきました。
そんなブルートレインが、JR東日本によって2025年以降「復活」する計画が動き出しています。
背景① 宿泊費高騰で夜行需要が復活
近年、国内旅行や出張にかかる宿泊費は大幅に上昇しています。
- 東京や大阪など大都市のビジネスホテルは、コロナ禍前の1.5倍から2倍に。
- 地方都市でも観光需要の高まりで1泊1万円を超えることが珍しくなくなっています。
この状況の中、「移動と宿泊を兼ねられる夜行列車」はコストを抑えたい旅行者や出張族にとって大きな魅力となりつつあります。
背景② 「推し活」が夜行列車を後押し
さらに、近年の「推し活ブーム」もブルートレイン復活の追い風となっています。
- 地方で行われるアーティストのライブに参加するファンが、夜行列車で会場へ直行。
- 終演後も夜行で帰れるため、ホテル代を節約しながら「翌日そのまま仕事や学校」に行ける。
- アニメやアイドルとのコラボ列車を走らせれば「聖地巡礼」とセットで利用するファン層を取り込める。
まさに夜行列車は「移動×宿泊×エンタメ」という、新しい推し活の形にフィットしています。
復活するブルートレインの特徴
現在検討されているブルートレイン復活案には、従来の寝台列車にはなかった工夫が盛り込まれています。
- カプセル型の個室寝台:カプセルホテルのように気軽でプライベート空間を確保。
- Wi-Fi・コンセント完備:推し活の動画配信や仕事にも対応可能。
- ラウンジカー:旅人同士が交流できる空間を設置、イベントやライブビューイング企画も。
過去の「北斗星」や「サンライズ出雲」のように「寝台そのものが旅の目的」となる設計を強化していく方向です。
他の交通機関との競争
もちろん、夜行列車の復活には課題もあります。
- LCC(格安航空)が片道数千円から利用できる時代に、夜行列車の料金設定は難しい。
- 高速バスも深夜に数多く運行されており、コスパ重視の層を取り込めるかがカギ。
しかし、列車ならではの「快適さ」と「旅情感」、さらに「推し活や宿泊代節約」という新しい需要を取り込めれば、航空機やバスと差別化できる余地は十分にあります。
まとめ:ブルートレイン復活は“懐かしさ”以上の意味を持つ
ブルートレインの復活は、単なるノスタルジーではなく、現代の社会背景――
- 宿泊費高騰によるコスト問題
- 推し活や地方イベント需要の拡大
- 移動しながら楽しむ「体験型の旅」
といった要素に合致した、新しい交通手段の選択肢になろうとしています。
ブルートレインが再び日本を走る日は、過去を懐かしむ世代だけでなく、新しい旅の楽しみを求める若い世代にとっても大きなニュースになるでしょう。