高すぎるiPhone、買い替えサイクルの崩壊、そして日本人の「我慢」消費

ここ数年、日本のスマートフォン市場に異変が起きています。かつては新型iPhoneの発売日にはAppleストアの前に長蛇の列ができるのが風物詩でしたが、いまやその光景は過去のもの。なぜ日本人はスマホの最新機種を買わなくなってしまったのでしょうか?本記事ではその背景にある経済的要因、ライフスタイルの変化、そして「スマホにお金をかけたくない」という消費者心理を掘り下げていきます。


最新iPhone、もう「高級品」に

まず、大きな理由のひとつが価格の高騰です。たとえば2024年発売のiPhone 15 Pro Maxは、日本での販売価格が20万円超。しかも、円安の影響で実質的な値上げが続いており、「かつては10万円で買えたハイエンドモデル」が、今では20万円以上というのが当たり前になってきました。

かつてスマホは「毎年買い替えるガジェット」でしたが、もはやこれは一部の富裕層か、ビジネス経費で落とせる層に限られる話です。


可処分所得の低下と「買い控え」

日本人の実質賃金はこの30年間でほとんど上がっていません。一方で物価は上がり、スマホ料金プランも複雑化。学生や若者ですら最新機種を欲しがっても、親の経済的負担や奨学金返済の現実により、数年前の型落ちモデルや中古市場を選ぶ人が増えています。

また、中古スマホの市場が拡大していることも見逃せません。メルカリやじゃんぱら、イオシスなどのリユースショップが浸透し、「新品を買うより状態の良い中古で十分」という選択肢が一般化しています。


スマホの性能、すでに「必要十分」

テクノロジー面でも、「最新機種でなければ困る」という状況が少なくなってきました。5年前のiPhoneでもSNSやYouTube、LINE、軽いゲーム程度であれば問題なく動作します。

つまり多くの人にとっては、**性能的にも「今のスマホで十分」**なのです。カメラの進化も、一般人が使いこなせるレベルを超えてしまい、「これ以上キレイに撮れても仕方がない」とさえ言われています。


「モノより体験」志向の加速

さらに、特に若者の間で加速しているのが「モノよりコト(体験)」の消費志向です。10万円以上するスマホよりも、友人と旅行に行く、ライブに行く、サウナで整う――そうしたリアルな体験にお金を使いたいという意識が強まっています。

つまりスマホは「目立つアイテム」ではなく、「生活インフラ」としての存在に変化しており、それに20万円も出すのは“無駄”と感じる層が増えているのです。


通信キャリアも苦戦、分割購入すら敬遠

通信キャリアも苦しい立場にあります。端末代の高さを分割支払いにしても、総額で20万円を超える買い物には変わりません。しかも4年払いが主流となり、「途中で壊れたら?」「機種変更できないの?」という不安から敬遠されるケースも。

また、「端末はAppleストアで買って、格安SIMを使う」というキャリア離れの動きも加速しており、従来の「2年ごとに買い換えるビジネスモデル」が通用しなくなっています。


まとめ:スマホは“贅沢品”に戻った

スマホはかつて「誰でも持つ時代」を経て、再び「高嶺の花」になりつつあります。
iPhoneは特にその傾向が強く、いまや一部の余裕ある層にしか手が出せないハイエンドガジェットとなりました。

日本人の消費はこれからますます慎重になり、「使えるものはとことん使い切る」「中古で賢く買う」「高機能よりコスパ重視」という流れが主流になると考えられます。

つまり、スマホも“我慢消費”の時代に突入したのです。


今後どうなる?

Appleが価格を見直す可能性は低く、むしろさらなる値上げの可能性さえ指摘されています。これからの日本人のスマホ選びは、ますます中古・格安志向へ。もしかしたら*“iPhone離れ”というトレンドが本格化するのも、そう遠くない未来かもしれません。

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