2025年8月8日、第107回全国高校野球選手権大会の初戦で、広陵高校が旭川志峯高校を5-3で破りました。しかし、この試合後、甲子園のグラウンドで異例の事態が起こりました。旭川志峯高校の複数選手が、広陵高校の選手との握手を拒否したのです。

今回は、この出来事の背景にある広陵高校の集団暴行事件と、握手拒否が投げかけた「スポーツマンシップ」の議論について、具体例を交えて深く掘り下げていきます。


1. 広陵高校の「勝利」に付きまとう影

広陵高校は、今年の春先に野球部内で発生した集団暴行事件の渦中にいました。

  • 事件の概要: 寮内で1年生部員が複数の上級生から暴行や性的強要を受け、心身ともに深い傷を負い、転校を余儀なくされたという痛ましい事件です。
  • 高野連の処分: この事件に対し、高野連は広陵高校に「厳重注意」という処分を下しました。そして、チームの甲子園出場を許可しました。

この処分には、当時から「あまりにも軽いのではないか」という批判の声が多く上がっていました。甲子園出場が、被害者の心情や、事件の重大性に見合わないという意見です。


2. 旭川志峯高校が示した「握手拒否」の真意

試合終了後、両チームの選手がホームベース付近で整列し、相手選手と握手を交わすのは、甲子園ではおなじみの光景です。しかし、この日の試合後、旭川志峯高校の一部の選手は、広陵高校の選手からの握手を拒否し、そのまま足早にベンチへと戻っていきました。

  • 握手拒否の具体例:
    • 広陵高校の選手が手を差し伸べるも、旭川志峯高校の選手はうつむいたまま、または視線を合わせずに素通りしていった。
    • 一部の選手は握手に応じたが、その後すぐに手を引っ込めた。

この行動の真意は、旭川志峯高校の選手たちにしか分かりません。しかし、この握手拒否は、広陵高校の選手たちが犯した過去の過ちに対する、彼らなりの抗議の意思表示であったと解釈する向きが強いです。


3. 「スポーツマンシップ」をめぐる二つの視点

この握手拒否をめぐっては、様々な議論が巻き起こっています。

視点A:「握手拒否はスポーツマンシップに反する」

  • 主張: どんな理由があれ、試合が終われば相手を称え合うのがスポーツマンシップの基本である。個々の選手には罪はない。
  • 具体例:
    • 「グラウンドの外での問題と、グラウンドの中でのプレーは切り離して考えるべきだ」という意見。
    • 「スポーツはフェアプレーの精神を教えるものであり、相手へのリスペクトは不可欠だ」という意見。

視点B:「選手たちの行動は、勇気ある意思表示だ」

  • 主張: 握手拒否は、単なるマナー違反ではない。事件をうやむやにせず、選手たちが自ら問題提起した勇気ある行動だ。
  • 具体例:
    • 「高野連が適切な処分を下さなかったからこそ、旭川志峯高校の選手たちが、自分たちの行動で抗議の意思を示したのだ」という意見。
    • 「いじめや暴力の被害者がいるのに、何事もなかったかのように握手を交わす方が、むしろ偽善的だ」という意見。

まとめ:勝利だけでは語れない、高校野球の今

広陵高校は甲子園で勝利を収めましたが、その勝利は、過去の集団暴行事件という重い影を背負ったものです。そして、旭川志峯高校の選手たちは、握手拒否という行動を通じて、私たちに「スポーツマンシップとは何か」「勝利とは何か」という問いを投げかけました。

今回の出来事は、高校野球が単なる「スポーツの祭典」ではなく、社会の縮図であり、様々な問題が交錯する場であることを改めて私たちに突きつけました。

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