近年、公務員の離職率が上昇傾向にあり、特に若手職員を中心に「役所に見切りをつける」動きが加速しています。「安定」というイメージとは裏腹に、一体何が起こっているのでしょうか?具体的な事例を交えながら、その深刻な実情に迫ります。

事例1:激務と責任の重さに疲弊したAさん(20代・女性・事務職)

Aさんは、採用されて3年目の若手職員です。配属された部署は常に人手不足で、残業は当たり前。休日出勤も珍しくありません。先輩職員が次々と辞めていくため、本来であれば数年かけて覚える業務を短期間でこなさなければならず、常にプレッシャーを感じていました。

「毎日終電近くまで働き、土日もイベント対応などで潰れることが多く、自分の時間が全く持てませんでした。責任の重さも想像以上で、ミスをすると上司から厳しく叱責される毎日。このままでは心身ともに持たないと思い、転職を決意しました。」

事例2:旧態依然とした組織文化に嫌気がさしたBさん(30代・男性・技術職)

Bさんは、専門知識を活かしたいと技術職で採用されましたが、実際には雑務が多く、専門性を活かせる機会はほとんどありませんでした。会議では前例踏襲の意見ばかりが通り、新しい提案はなかなか受け入れられません。上司は保身第一で、リスクのある業務には及び腰。

「大学で専門的な知識を学んだのに、役所ではコピー取りや書類整理ばかり。もっと自分のスキルを活かして社会に貢献したいと思っていましたが、この組織では無理だと感じました。民間の企業に転職し、今はやりがいのある仕事に充実した日々を送っています。」

事例3:パワハラとセクハラが蔓延する職場に絶望したCさん(40代・女性・福祉職)

Cさんの職場では、一部の管理職によるパワハラやセクハラが常態化していました。相談窓口は形だけで、訴えてもまともに取り合ってもらえません。見て見ぬふりをする同僚も多く、孤立感を深めていきました。

「毎日、上司の嫌味や性的な発言に耐えるのが苦痛でした。何度か相談しましたが、『あの人はそういう人だから』と一蹴され、組織は何もしてくれませんでした。このままでは精神的に壊れてしまうと思い、退職を決意しました。今はハラスメントのない、風通しの良い職場で働いています。」

事例4:給与の低さと将来への不安を感じたDさん(20代・男性・事務職)

Dさんは、安定した生活を求めて役所に就職しましたが、数年働いても給与はなかなか上がりません。民間企業で働く同世代の友人と比べると、待遇の差は歴然としていました。また、少子高齢化が進む中で、自身の将来設計に不安を感じるようになりました。

「公務員の給与は安定していると言われますが、昇給のペースは遅く、手当も十分とは言えません。民間の友人たちはどんどん給与が上がっているのに、自分だけ取り残されているような気がしました。将来のことを考えると、もっと給与の高い仕事に就きたいと思い、転職活動を始めました。」

なぜ、役所から人が離れていくのか?

これらの事例から見えてくるのは、以下のような要因です。

  • 過酷な労働環境と低いワークライフバランス: 人手不足による長時間労働、休日出勤の常態化。
  • 旧態依然とした組織文化と変化への抵抗: 前例踏襲主義、新しい意見の排除。
  • ハラスメントの横行と不十分な対策: 相談体制の不備、加害者への甘い処分。
  • 低い給与と将来への不安: 民間企業との待遇格差、将来設計の不透明さ。
  • キャリアパスの不明確さ: 専門性を活かせない、成長を感じられない。

退職者の増加が組織に与える影響

優秀な人材の流出は、役所にとって大きな損失です。

  • 業務効率の低下: 経験のある職員が減り、業務の質が低下する。
  • 組織の活力低下: 若手職員の育成が遅れ、組織全体の士気が下がる。
  • 住民サービスの質の低下: 職員のモチベーション低下により、住民への対応が悪化する可能性。

役所は変われるのか?

一部の自治体では、働き方改革やハラスメント対策、人事制度の見直しなど、改善に向けた取り組みも始まっています。しかし、長年培われてきた組織文化を変えるには、トップダウンだけでなく、職員一人ひとりの意識改革が不可欠です。

「安定」という看板に頼る時代は終わりを迎えつつあります。魅力ある職場環境を整備し、職員が意欲を持って働けるように変わらなければ、退職者の波はますます加速していくでしょう。

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