2025年の選挙情勢を見ると、自民・公明による与党連立政権は、ついに過半数割れの危機に直面しています。長期政権によるマンネリ感、物価高、地方の疲弊、少子化、年金不安……国民の不満は積もるばかり。

そんな中で、一部の有権者が「外国人の受け入れを制限する政策を掲げれば支持率が上がる」と主張する声も強くなっています。実際、治安悪化や文化的摩擦、社会保障の圧迫など、「外国人受け入れ政策」に対する国民の懸念は根強く存在しています。

しかし、自民・公明はそれを正面から公約に掲げることはしません。なぜなのか?その背景には、単なる「配慮」ではない複雑な事情が絡んでいます。


1. 経済界との関係:労働力としての外国人依存

自民党が長年支えられてきた経団連などの経済団体は、外国人労働者を「欠かせない存在」と位置づけています。建設・農業・介護・外食など、低賃金で人手不足が深刻な業界では、すでに外国人労働者なしでは回らないのが実情です。

具体例:介護現場での依存

東京都内のある介護施設では、職員の3割以上がベトナムやフィリピン出身の技能実習生。日本人が集まらず、募集をかけても応募ゼロという状況が続いています。外国人受け入れが止まれば、施設の運営が成り立たないと経営者は語っています。

外国人規制を公約にすれば、経済界からの猛反発は避けられず、選挙資金や業界団体からの支持も失うリスクがあります。


2. 国際的なイメージ戦略:「人権」と「開かれた国」アピール

もう一つの要因は、国際社会への「顔」です。移民や難民の受け入れについて厳しい規制を設けると、「排外主義的な国家」としてイメージが悪化する恐れがあります。

具体例:外国人技能実習制度の批判

近年、日本の技能実習制度は国際人権団体や国連から「労働搾取」「事実上の強制労働」として批判されており、日本政府は改善に動いています。ここで「外国人排除」に舵を切れば、国際的な非難を浴びることは避けられません。

経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)を推進するうえでも、外国人受け入れの柔軟さは「外交カード」として重要です。


3. 公明党との連立維持の事情

もうひとつの障壁が、公明党の存在です。創価学会系の公明党は「人権尊重」「共生社会」を強く主張しており、あからさまな外国人排除政策には極めて否定的です。

具体例:入管法改正での温度差

2023年の入管法改正の際、自民党が不法滞在者の送還強化を主張した一方、公明党は「人道的配慮が必要」として一部修正を要求しました。結局、自民党案が一部後退する形で成立しました。

もし自民党が「外国人規制」を強く打ち出せば、公明党が連立から離脱し、政権が崩壊するリスクすらあります。


4. 地方と都市部の「温度差」

都市部と地方では、外国人に対する意識も大きく異なります。地方では、外国人による地域コミュニティの活性化が期待されている場面もあり、一律で「規制強化」を掲げると地方票を失う可能性があります。

具体例:長野県・南信地域の外国人農業労働者

人口減で高齢化が進む南信地域では、外国人労働者による農業支援が活発です。市長は「彼らがいなければ地域経済が崩壊する」と明言しており、住民も比較的共生に前向きです。


結論:言いたくても言えない「本音と建前」

自公政権が過半数を失いそうな今、「外国人規制」を前面に出せば一部の支持は集まるでしょう。しかし、それは以下の代償を伴います:

  • 経済界からの支持喪失
  • 国際的イメージの悪化
  • 公明党との連立崩壊
  • 地方の離反

つまり、政権浮上のカードになり得ても、それを切れば「自壊する」リスクが高いのです。


最後に

日本の政治は、理念だけでなく「支持基盤」と「利害調整」で成り立っています。単純に「国民の声を反映すればいい」とはいかないのが現実です。

選挙のたびに浮かんでは消える「外国人規制」の議論。しかしそれを真正面から掲げられない理由こそ、日本政治の限界を象徴しているのかもしれません。

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