選挙のたびに思うこと――
「この施策、全部あの議員のおかげみたいな顔してるけど、実際にやってるのは役所の人たちでしょ?」
そんな“政治の現場あるある”を、今日はリアルな事例と共に深掘りしていきます。
■ 手柄は“議員”、汗をかくのは“職員”
選挙が近づくと、議員のSNSや街頭演説にはこういった言葉が並びます:
- 「私が働きかけて、保育園の定員を増やしました!」
- 「私の提案が通って、補助金制度が実現しました!」
- 「私の実績です!ご支持を!」
でもちょっと待ってください――。
実際に制度を作り、予算を調整し、住民対応をし、何度も内部調整をしているのは役所の現場職員なんです。
■ 具体例①:「給食費無償化は私がやりました」?
とある地方都市での話。2024年度から小中学校の給食費が無償になりました。
ある市議会議員が選挙用ビラにこう記載:
「子育て支援のため、私が提案し実現した給食費無償化!」
でも実際の経緯はこうでした:
- 数年前から市民からの要望が寄せられていた
- 教育委員会と財政課が何度も協議を重ね、対象学年や予算を検討
- 複数の会派から同様の提案が出ていた
- 議会全体で議論し、最終的に全会一致で可決
- 実務は学校・教育委員会・総務課の連携プレーでスタート
つまり、「一人の議員の手柄」ではなく、組織と現場の努力の積み重ねだったわけです。
■ 具体例②:災害対応でも“私が動きました”アピール?
2024年の能登半島地震では、多くの自治体から職員が現地支援に派遣されました。
ある県議はSNSでこう発信:
「被災地への支援物資の搬送を要請しました!すぐに県が対応しました!」
確かに働きかけはあったかもしれません。
でも実際にトラックを手配し、物資を仕分けし、現地に届けたのは――
- 県の防災担当職員
- 現場の社会福祉協議会スタッフ
- 市民ボランティアの人々
多くの政治家が「動いた感」だけを前面に出す中で、汗をかき、現場に立っているのは名もなき職員たちです。
■ そもそも議員の仕事って「現場の応援」じゃないの?
議員の本来の仕事は以下のようなものです:
- 住民の声を代弁して議会で提案・議論する
- 予算案に賛否を示す
- 行政に対してチェックを行う
つまり、提案の“入口”をつくることはできても、“実行”しているのは行政組織。
その線引きをしっかり理解していないと、まるで「議員=ヒーロー」「職員=裏方」みたいな歪んだ印象を与えてしまいます。
■ 職員は実名を出さない。だから損をしている?
多くの自治体職員は、公務員として実名でのSNS発信や自己アピールを制限されています。
成果が出ても「広報には載るけど、個人の名前は出ない」というケースがほとんど。
一方、議員は個人のSNS・チラシ・演説などで実名で実績をアピールできる。
この情報発信力の差が、「手柄の見え方」にもつながってしまっているのです。
■ じゃあ有権者として、どう見るべき?
✅ 見極めポイント:
チェック項目 | 見るべきポイント |
---|---|
発言内容 | 「自分がやった」ばかり強調していないか? |
実績の根拠 | 提案だけでなく、議会の流れや合意形成の説明があるか? |
チーム性の認識 | 職員や他会派の協力についても触れているか? |
■ まとめ:手柄を競うより、チームで動いた成果を語ろう
選挙のたびに、「これは私の実績!」と誇る政治家は多いです。
でも本当に感謝すべきなのは、目立たず、報われずとも日々働く職員たち。
政策はチームで生まれ、制度は現場で支えられている。
これを忘れないためにも、私たち有権者が**「誰が実際に何をしたのか」**を冷静に見極める力を持つことが求められています。