かつて一世を風靡した「高級食パン専門店」が、全国的に大量閉店に追い込まれています。ピーク時には140店舗を超えていた専門店も、2025年にはわずか50店舗前後にまで激減。この急激な減少の背景には、単なるブームの終焉だけではない、社会的・経済的な構造の変化が見え隠れしています。


高級食パンブームとは?

2018年ごろから全国で急速に拡大した高級食パン専門店は、1斤800円〜1,000円前後という高価格ながら、「甘くて柔らかい」「何もつけなくてもおいしい」として一躍話題に。特徴的なネーミングやオシャレなパッケージ、行列のできる店舗も多く、SNS映えも相まって一大ブームとなりました。

代表的なブランドには、「乃が美」「銀座に志かわ」「考えた人すごいわ」などがあり、どれもオープン当初は数時間待ちも珍しくありませんでした。


なぜ閉店が相次いでいるのか?

1. 需要の一巡と飽和状態

流行に乗って各地に出店が相次いだ結果、都市部では競合が激化。高級食パン自体の新鮮味が薄れ、消費者の関心も次第に低下しました。もともと日常的に買うには高すぎる価格帯であったため、リピーターの獲得が難しく、ブームが一巡すると一気に売上が減少しました。

2. 価格高騰と原材料の高騰

バター、小麦、砂糖といった主要原材料は、コロナ禍以降の物流混乱やウクライナ情勢の影響などで軒並み価格が上昇。加えて電気・ガス代などのエネルギーコストも増加し、高級食パンを維持するのにかかるコストがかさみ、採算が合わなくなった店舗が多発しました。

3. コンビニ・スーパーの追随

コンビニや大手スーパーも「高級食パン風」の商品を低価格で展開し始めたことで、専門店の優位性が薄れました。特に都市部では、「わざわざ行列に並ぶ必要はない」という消費者心理の変化も大きく影響しています。

4. フランチャイズモデルの限界

急拡大の多くはフランチャイズ形式によるもので、十分な市場調査がなされないまま出店されたケースも多く見られました。その結果、立地や運営ノウハウにばらつきがあり、経営が安定せず閉店に至った店舗も多かったとされています。


今後の展望

高級食パン専門店は、もはや一部の限られた店舗を除き、日常的な需要に支えられる「地域密着型ベーカリー」へとシフトしなければ生き残れない時代になっています。ブームに頼るのではなく、真に美味しいパンと継続的なブランド力が求められるフェーズに入ったといえるでしょう。


まとめ

高級食パン専門店の大量閉店は、「ブーム型消費」と「持続可能なビジネスモデル」の違いを如実に示す事例です。流行を支えるメディア戦略や話題性は短期的な効果がありますが、本当に長く愛される商品・サービスとは、日常の中で選ばれ続けるものなのかもしれません。

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