2024年秋の国会論戦で、立憲民主党の奥田議員が、当時の高市総理に対し、**「子どもに戦争をしないと約束できるか」**という、極めて感情的かつ直球の問いを投げかけ、大きな議論を呼びました。
このやり取りは単なる質疑応答にとどまらず、安全保障の議論における「感情論」と「現実論」の対立、そして国会論戦のあり方そのものについて、深い波紋を広げました。
この注目の論戦の具体的な内容と、それがなぜ「論点ずらし」や「党の存立危機」と関連づけられるのかを詳しく解説します。
🎤 質疑の具体的な内容:「子どもに約束できますか?」
この質疑は、安全保障関連法における**「存立危機事態」**を巡る議論の中で行われました。
📌 奥田議員の問い:感情に訴えかける「約束」
奥田議員は、質疑の中で、戦争の悲惨さや未来を担う子どもたちの安全に焦点を当て、高市総理に対し、強い口調で以下のような趣旨の質問を投げかけました。
「(存立危機事態によって自衛隊が行動を起こし、)子どもたちが戦場に行かされるようなことにならないと、この場で、未来を生きる子どもたちに明確に約束できますか?」
これは、安保法制の個別具体的な合憲性や解釈を問うのではなく、「戦争の可能性」という最大の不安要素を感情的に引き出し、**「絶対に戦争をしない」**というゼロリスクの約束を政治リーダーに迫るものでした。
📌 高市総理の答弁:現実主義と法の支配に基づく回答
これに対し、高市総理は、感情的な「約束」ではなく、現行の法制と現実的な国際情勢に基づいて答弁しました。
**「総理大臣として、国民の命と平和な暮らしを守り抜く責任がある。そのために、万が一の事態に備え、現行法制に基づき、憲法の範囲内で適切に対応する。(戦争をしないという)ゼロリスクの約束はできないが、その可能性を最小限にするための外交努力と抑止力強化を尽くす」(趣旨)
高市総理は、政治家として「絶対に戦争はしない」という抽象的な約束は、国際情勢という現実の前では無責任になりかねないと示し、現実的な「抑止力」の重要性を強調しました。
🌪️ なぜこの論戦が波紋を呼んだのか
この質疑応答は、単に両者の見解の相違として終わらず、野党側の戦術に対する批判へと発展しました。
1. 「感情論」と「現実論」の対立
奥田議員の質問は、安保政策の肝である「抑止力」や「集団的自衛権の限定行使」といった冷静な論点から離れ、「戦争反対」という究極の感情論に議論をすり替えようとした、と与党側から批判されました。国民の不安を煽るだけで、具体的な対案がないという指摘です。
2. 立憲民主党の「存立危機」への関連
前回のブログ記事でも触れたように、立憲民主党は現在、政策的な一貫性や対案提示能力の不足が指摘され、「党の存立危機」にあると言われています。
- 具体的な政策議論の放棄: 議員が最も重要視すべき「存立危機事態」の具体的な法的要件や、政府の判断基準といった専門的な論点を深めることなく、抽象的な感情論に終始したことは、「政策を理解していない」「議論を逃げている」という印象を有権者に与えかねません。
- 「戦術としての限界」: 過去の野党は、安保法制を「戦争法案」と呼ぶことで支持を集めましたが、今回の質問は、その旧態依然とした戦術から脱却できていないことを露呈し、結果として党の支持拡大には繋がりにくいと見られています。
✍️ まとめ:国会論戦に求められるもの
奥田議員と高市総理のやり取りは、国民の関心が高いテーマを扱ったものの、国会論戦として**「深み」**があったかどうかが問われる結果となりました。
政治家が国民の不安に寄り添うことは重要ですが、特に国の安全保障という重大な問題においては、感情論ではなく、現実的な脅威を前にした具体的で一貫した政策対案を示すことこそが、政権を目指す野党に求められる責務です。
国民は、不安を煽る「約束」ではなく、**「どうすれば日本は平和を守れるのか」**という、より具体的で建設的な議論を国会に求めていると言えるでしょう。