数年前までの「待てば安くなる」という常識は完全に崩れ去り、現在は**「待てば待つほどモノがなくなり、価格が跳ね上がる」**という異常事態に突入しました。特にメモリ(RAM)とSSDの供給不足は深刻で、年内の在庫もまさに「黄信号」を通り越して「赤信号」に近い状況です。

この記事では、なぜ今パソコンがこれほどまでに高騰しているのか、その裏側と今後の見通しを詳しく解説します。


1. パソコン高騰の元凶は「AIブーム」による部品の奪い合い

今回のパーツ不足と高騰の最大の要因は、世界的な生成AI(ChatGPTなど)の爆発的普及です。

  • HBM(高帯域メモリ)への生産シフト:AIを動かす巨大なサーバーには「HBM」という特殊で高価なメモリが大量に必要です。SamsungやSK Hynix、Micronといった主要メーカーは、利益率が桁違いに高いAI向けメモリの生産に全力を注いでおり、私たちが使う一般PC向けメモリの生産ラインを縮小・転換しています。
  • サーバー向けSSDの需要急増:AIの学習には膨大なデータ保存領域が必要なため、エンタープライズ(企業)向けSSDの需要が爆発。これにより、一般消費者向けのNANDフラッシュ(SSDの主原料)が後回しにされ、市場から消えつつあります。

2. 「メモリ3倍」「SSD 1.5倍」―― 衝撃の価格推移

具体的にどの程度価格が上がっているのか、2025年後半の主なパーツの価格推移をまとめました。

部品カテゴリ2025年年始(目安)2025年12月現在騰落率
DDR5 メモリ (32GB)約16,000円約48,000円〜約300%
NVMe SSD (1TB)約12,000円約22,000円〜約180%
ノートPC本体基準価格最大30%の値上げ約1.3倍

特にDDR5メモリの一部ハイエンドモデルでは、年初の4倍近い価格で取引されるケースも出ており、自作PC派やクリエイターにとって「地獄のような状況」となっています。


3. PCメーカー各社も「値上げ」を一斉に発表

パーツ単体だけでなく、完成品PCも値上げの波に飲まれています。

  • 大手各社の動き:Dellは12月中旬から法人向けPCを最大30%値上げし、LenovoやHPも2026年1月からの価格改定を予告しています。
  • 在庫の枯渇:メーカー側の社内通知では「ストレージ供給が急速に逼迫している」との警告が出ており、見積もり有効期限を短縮するなどの異例の対応が取られています。

4. 今後の見通し:2026年も「高止まり」か

残念ながら、この状況が短期間で解決する見込みは薄いと考えられています。

専門家の見解

主要メーカーの工場増産には数年単位の時間がかかる上、AI需要は今後さらに拡大すると予測されています。市場調査会社TrendForceなどは、2026年以降もメモリ価格は高止まり、あるいはさらに一段階上昇する可能性を指摘しています。


今、私たちはどう動くべきか?

もし、あなたが仕事や学習で新しいパソコンが必要なら、**「今すぐ、在庫があるうちに確保する」**のが最善の選択肢と言わざるを得ません。

  • 「年末年始のセール」は期待薄:例年のような大幅値引きは期待できず、むしろ「セール前に在庫がなくなる」リスクの方が高い状況です。
  • 中古市場もチェック:新品が高騰しているため、程度の良い中古PCや旧世代モデル(DDR4搭載機など)の需要も急増しています。

この混乱は、単なる「一時的な品不足」ではなく、コンピューティング資源が「個人」から「AIサーバー」へと奪い取られている構造的な変化です。

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