観光地・鎌倉でまさかの大規模断水
2025年6月、神奈川県鎌倉市で約1万世帯が断水する事態が発生。
被害は一般家庭だけでなく、観光名所である長谷寺・小町通り・由比ヶ浜周辺の飲食店や旅館にも波及し、観光客の混乱も報告されました。
「風情ある町並み」の裏で、インフラの老朽化が限界を迎えていたことを、私たちはこの出来事で思い知らされたのです。
老朽化は“全国的問題”──鎌倉だけじゃない!
日本の上下水道・道路・橋梁などのインフラの多くは、高度経済成長期(1950〜70年代)に整備されたもの。
それらの寿命はおおむね「50年」と言われており、現在は全国各地で一斉に“耐用年数切れ”の時期を迎えています。
- 上水道管の約6割が築40年以上(総務省調査)
- 橋梁の4割以上が老朽化(国交省報告)
- 「突発断水」「突然の道路陥没」などが増加傾向
鎌倉での断水は、その一端にすぎません。
なぜ修繕できない?「人手不足」「予算不足」という現実
では、なぜインフラが老朽化していると分かっていながら、補修・交換が進まないのでしょうか?
1. 専門人材の不足
インフラ整備に関わる土木技術者、水道局職員、施工業者などの多くが高齢化。
若手の担い手が不足し、設計も現場管理も手が回らない状態に。
2. 地方自治体の財政難
自治体によっては、人口減少に伴い税収が大きく減少。
さらに福祉・教育・防災対策の予算が膨らみ、インフラ修繕の予算を十分に確保できていないのが実情です。
3. 優先順位が低い
橋や道路と違い、水道管などの地下インフラは目に見えにくく、
“壊れて初めて対処”という後手の姿勢が行政現場で当たり前になってしまっている面も否定できません。
鎌倉市の特殊事情:観光都市ゆえの“二重の脆弱性”
鎌倉市は人口17万人ほどの中規模都市であると同時に、年間2000万人以上の観光客が訪れる**「観光特化都市」**でもあります。
そのためインフラは、「住民+観光客」という2倍の負荷に晒されがちです。
- 観光シーズンには水道使用量が激増
- 狭い旧市街地のため、緊急工事も難航
- 観光依存の経済構造ゆえ、断水による経済損失が甚大
今回の断水で、飲食店では営業休止、宿泊施設では予約キャンセルが相次ぎ、**「インフラ=観光の命綱」**であることが再認識されました。
インフラ危機は“日本全体の縮図”
鎌倉で起きたこの断水は、決して例外的な出来事ではありません。
- 札幌市では2019年、老朽化水道管が破裂し、全面断水に
- 福岡市では道路陥没事故が大問題に
- 大阪では老朽下水道からの漏水が頻発
これらはすべて、“見えないインフラ”が限界に達しつつある警告です。
今後の日本:インフラを支える力が消えていく
さらに問題なのは、今後インフラを支える力すら消えていくことです。
- 若者の地方離れ=地方自治体の弱体化
- 土木・建設業の就労者は2030年には30%減少見込み
- 国も地方も借金漬けで“先送り行政”が蔓延
結果として、「壊れても直せない」「点検すらできない」社会が常態化しつつあるのです。
まとめ:壊れゆくインフラ国家、日本
今回の鎌倉市での断水は、もはや“珍しいニュース”ではありません。
むしろ、これから全国各地で頻発するであろう未来の“予告編”です。
- インフラは「使えて当たり前」ではない
- 観光地でも住宅地でも、限界はすぐそこに
- 見えない地下の危機は、ある日突然表面化する
政治も、行政も、私たち市民も、いまこそ「壊れてからでは遅い」という前提に立ち、
“壊れる前に守る”という社会へのシフトが求められています。