ここ最近、鹿児島県・トカラ列島近海で地震が相次いで発生しています。2025年6月時点で、数日にわたり震度1~3程度の地震が連続発生し、住民や関係機関が警戒を強めています。
「なぜ、トカラ列島だけこんなに地震が多いのか?」
その理由には、地形・プレート・断層活動など複数の地質的要因が重なっていることがあります。本記事では、トカラ列島の地震が起きる根本的な原因について、専門家の知見や過去の事例を交えながら詳しく解説します。
トカラ列島とはどんな場所?
トカラ列島は、鹿児島県の南部、屋久島と奄美大島の中間に位置する島々で、十島村というひとつの行政単位に属しています。7つの有人島と複数の無人島から構成され、人口はわずか700人ほど。
しかしこの小さな島々の下では、日本列島でも特に強い地殻変動が続いているエリアなのです。
地震の原因その1:プレート境界にある地質的構造
トカラ列島は、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界上にあります。この境界では、
- フィリピン海プレートが北西方向に沈み込んでいる
- その圧力により地殻がひずみを蓄積
- 限界に達すると、岩盤が破壊されて地震が発生する
というメカニズムが継続的に作用しています。
具体例:
- 2021年12月の群発地震では、1週間で200回以上の有感地震が発生。この時はフィリピン海プレートの沈み込みによる「ひずみ解放」が原因とされました。
- 2025年6月の地震活動も、同様にプレート境界でのひずみが原因と考えられています。
地震の原因その2:活断層の存在
トカラ列島の直下には、いくつかの小規模な活断層が存在していると見られています。特に中之島~平島周辺では、浅い地震が頻発しており、断層に沿ってエネルギーが解放されている可能性があります。
具体例:
- 2023年3月に発生したM5.1の地震では、震源が深さ10km未満のごく浅い場所で、断層活動によるものと推定されました。
- トカラ列島は「プレート境界型」と「直下型(活断層型)」が複合的に起きやすい特異な場所なのです。
地震の原因その3:火山活動との関連性
トカラ列島周辺には、活火山である諏訪之瀬島があります。この火山では噴火活動が頻繁に観測されており、地震活動との関連が指摘されています。
火山活動が活発になると、マグマの移動によって周囲の地殻に圧力がかかり、火山性地震や誘発型の地震が起こることがあります。
具体例:
- 2024年6月、諏訪之瀬島の爆発的噴火の後、平島付近で群発地震が発生。火山活動との連動が疑われました。
- 2025年6月の地震でも、気象庁は「火山性地震の可能性を含めて慎重に監視中」とコメントしています。
地震の原因その4:地殻変動とスロー地震
近年の研究では、トカラ列島周辺で**スロー地震(ゆっくりすべり)**と呼ばれる現象が観測されています。これは通常の地震のように「一気にズレる」のではなく、数時間から数日かけてゆっくりとプレートが動く現象です。
このスロー地震が起こると、周囲の地殻にストレスが再分配され、結果的に通常の地震を誘発する可能性があると考えられています。
具体例:
- 2022年10月のスロー地震観測の後、トカラ列島南部でM4クラスの群発地震が発生。
- 専門家は「スロー地震は将来的な大地震の予兆にもなり得る」と警告しています。
今後に備えるべき理由とは?
トカラ列島の地震は、局所的でありながら、巨大地震の引き金となる可能性もある危険な現象です。以下のようなことが起きる懸念もあります。
- トカラ列島の群発地震が誘発して、南西諸島トラフ沿いの巨大地震(例:南海トラフ型地震)に波及する可能性
- 離島のインフラに被害が出た場合、住民が孤立するリスク
- 津波が発生した場合、避難が困難な地形的問題
結論:トカラ列島の地震は“警鐘”かもしれない
地震の原因は単一ではなく、プレート境界・活断層・火山・地殻変動の複合要因によって起きています。つまり、地震が頻発するのは「たまたま」ではなく、「必然」なのです。
日本列島全体が不安定化している今、トカラ列島で起きている現象は、「次の大きな揺れ」のサインかもしれません。
日々の防災意識と情報のアップデートを忘れずに、備えておくことが何よりも重要です。