はじめに
かつては「60歳で定年退職し、悠々自適の老後を過ごす」ことが一般的な人生設計でした。ところが今の日本では、その夢は一部の“勝ち組”だけに許される贅沢となりつつあります。
物価高騰、名ばかりの賃金上昇、止まらないインフレ――この三重苦の中で、退職すらできず、生きるために働き続けなければならない人たちが急増しています。しかも、ほとんどの人がその“異常な状況”にすら気づいていないのです。
1. 定年退職=勝ち組?その現実とは
現在、60歳を迎えた人の多くが「再雇用」や「シルバー派遣」として働き続けることを選ばざるを得ない状況にあります。背景には次のような要因があります:
- 年金だけでは生活費がまかなえない
- 住宅ローンや子どもの教育費が60代まで残る
- 高齢者でも働くことが“当たり前”という社会風潮
結果として、本当に“完全に退職できる人”は、預金・資産が潤沢にある一部の人たちだけ。年収ベースで言えば、退職時に1億円以上の資産形成ができている人は、全体の1割未満とも言われています。
2. 物価は毎年上がっている。でも、それに気づいていない人が多すぎる
- 食パン:10年前は100円、今は150円以上
- コンビニ弁当:500円台から700円台へ
- 電気・ガス:補助が終了し、家計を直撃
数字では明らかに生活コストは上がっているのに、「値上げは一時的」「政府が何とかしてくれるだろう」と感覚がマヒしてしまっている人が大半です。
しかも、この物価上昇はもう「元に戻ることはない」と言われています。つまり、“高コスト社会”がこれからのスタンダードになるということです。
3. 賃金は本当に上がっているのか?
最近は「30年ぶりの賃上げ」というニュースが目立ちますが、それは大手企業に限った話であり、多くの人にとっては「見かけ上の増加」に過ぎません。
- 社会保険料の負担増
- 増税・物価高による実質賃金の目減り
- ボーナスや手当のカットによる実質収入減
結果として、生活はむしろ“苦しくなっている”人の方が多いのです。それでも「給料が上がったから大丈夫」と思い込まされている――それがこの社会の怖さです。
4. 働けなくなったとき、あなたはどう生きる?
人間はいつか働けなくなります。それは病気かもしれないし、親の介護かもしれないし、加齢による衰えかもしれません。
しかし今の日本では、そのときの生活を支えてくれるはずの**年金や貯蓄が“足りない”**人が大半です。
- 年金だけで暮らせる人:ごくわずか
- 老後破産:今や珍しくない現象
- 「死ぬまで働く」どころか「働けなくなったら詰む」
このような“詰みかけた社会構造”の中で、**本当の意味で安心してリタイアできる人は、間違いなく「勝ち組」**だと言えるのです。
5. 多くの人がなぜ気づいていないのか?
- 「まだ若いから大丈夫」と将来を先送り
- メディアが“ポジティブな老後”だけを報道
- SNSでの“キラキラ退職生活”に騙される
- 「みんな働いてるから普通」と思い込む社会的同調圧力
このようにして、現実の厳しさから目を背ける空気が醸成されているのです。
6. いまからできる3つの対策
- 「老後も働く」前提で生活設計を見直す
― 今のうちから、何歳まで働くつもりか、どう働くのかを具体的に考える。 - 支出を最小化し、固定費を削る
― 通信費、家賃、保険などは“老後の敵”になる。若いうちに削減を。 - 副収入・投資・年金以外の収入源を育てておく
― 少額でも収益化できるスキルや資産がある人は老後も強い。
おわりに
定年退職はもはや“誰にでも訪れる当然のゴール”ではなく、“限られた人だけが到達できるステージ”になってしまいました。しかも、その変化に多くの人が気づいてすらいない。
だからこそ今、立ち止まって考えるべきなのです。「自分は本当に、老後に退職できるのか?」と。
そしてもしできないなら、いま何をすべきか――それを一人ひとりが自分に問いかける時期に来ているのではないでしょうか。