選挙前になると急に“実績アピール”が増える不思議

選挙が近づくと、街には候補者のポスターや選挙カー、そして「私がやりました!」という文字が踊るチラシが大量に出回ります。

「〇〇駅前のバリアフリー化は私の実績です」
「〇〇小学校のエアコン設置は私の提案です」
「防災備蓄の強化、私が先頭に立ちました」

しかし、本当にそうでしょうか?
実際に調整や住民説明、計画立案や予算調整に走り回っているのは、多くの場合、**自治体の職員(行政職)**なのです。


① 実際の「バリアフリー化」現場では職員が奔走

たとえば、ある地方の駅前整備事業。ある議員は自らのビラで「駅前のエレベーター設置、私が誘致しました!」と大々的にアピールしていました。

しかし裏ではどうかというと…

  • 地元自治体の都市整備課が、数年かけて国の補助金を獲得し、都市計画マスタープランの改定を実施。
  • 住民説明会では、住民の反対や再説明の要望を受けながら、何度も資料を作成し直し、議会とも調整。
  • 実際に施工会社との連絡調整をしたのも職員。

にもかかわらず、表に出るのは「議員の顔写真と実績だけ」。
これは、行政現場ではよくある話です。


② 学校のエアコン設置:政策の主張者=実行者とは限らない

  • 学校施設のエアコン整備は、全国的に議論が高まった2018年の猛暑以降、一気に進みました。
  • たしかに、議会で「整備の必要性」を訴えた議員はいます。しかしその後、
    • 設計業者の選定
    • 教室配置の検討
    • 電力容量の見直し
    • 保護者や教員との意見交換

これらの地道な作業を担ったのは、教育委員会や施設課の職員たちです。

にもかかわらず、「私がエアコンをつけました!」とSNSで発信される現実
これでは、現場の士気は下がる一方です。


③ 防災備蓄の強化:議員の「指摘」から始まったかもしれないが…

  • ある区では、災害時に備えてペットボトル水・簡易トイレ・毛布などを倍増させる計画が進められました。
  • 議員の質問で「備蓄が不十分では?」と取り上げられたのは事実です。
  • しかし、そこから実際に
    • 倉庫スペースの確保
    • 年度内に収めるための入札手続き
    • 支払い予算の会計処理

などをこなしたのは、防災課・財政課・会計課の職員たちです。


④ 「議会質問=自分で全部やった」は誤解

もちろん、議員の役割がゼロだとは言いません。
議会で取り上げることで、行政側が優先順位を上げたり、方向性を再検討するきっかけになることもあります。

でも、議会質問は**「きっかけ」や「要望」であって、実行や運用は別物**です。

「やると決める」のと「やりきる」には、大きな距離があります。


⑤ なぜこういう誤解が広まってしまうのか?

  • 有権者の多くが、行政の内部構造を知らない。
  • メディアも議員の発信ばかり取り上げ、「職員の地味な仕事」は報じられにくい。
  • SNSの発信力は議員側に集中しており、「目立った者勝ち」の世界。

こうした要因が重なり、「すべて議員がやった」という誤認が繰り返されてしまうのです。


⑥ 私たちにできること:政治の裏側を見る力を持とう

  1. 議員の発信だけで判断せず、議事録や行政の公式資料も確認する
  2. 選挙チラシに書かれた“実績”が本当にその議員の主導か、冷静に見極める視点を持つ
  3. 日頃から、地道に働いている役所職員へのリスペクトを忘れない

まとめ:「俺がやった!」と言う前に、誰が汗をかいたかを想像しよう

選挙が近づくと、やたらと自分の手柄を主張する候補者が増えます。
でも本当に「まち」を支えているのは、日々黙々と働く自治体職員や現場の人たちです。

地味な人が、地道な仕事を、ちゃんと続けている。
その姿勢を見落としてしまえば、政治は「見せかけのショー」に変わってしまいます。

投稿者 ブログ書き