長引く物価高、低賃金、少子化、年金不安、地方の衰退、教育費の負担増…。
これらの問題は一見バラバラに見えて、実はすべて根っこでつながっています。
その根源にあるのは、政治が「国民の暮らし」より「既得権益」を優先してきた構造的失敗です。
この記事では、日本の政治がなぜここまで国民生活から乖離してしまったのか、その歴史的背景と実態、そして今後の課題について詳しく解説します。
◆ そもそも「既得権益」とは何か?
「既得権益」とは、過去の制度や利権によって既に得られている経済的・社会的な利益や特権のことです。
それは次のような形で社会の中に存在しています:
- 官僚機構による天下り先の維持
- 建設・医療・農業など業界団体による補助金依存
- 放送・通信など旧体制の事業者の参入障壁
- 自治体間の不平等な予算配分や利権構造
- 政党と業界・団体の「支持票と見返り予算」の取引
これらの権益は、一度獲得されたら手放されにくく、それを壊そうとする政治家や改革案は、組織票・献金・官僚抵抗によって潰されるという悪循環が起きています。
◆ 実例で見る「国民不在」の政策の数々
1. 消費税増税と法人税減税のセット
1990年代以降、消費税は累積10%まで引き上げられた一方、企業の法人税率は着実に引き下げられてきました。
その結果どうなったか?
- 国民の購買力は落ち込み、個人消費は長期低迷
- 大企業は過去最高の内部留保を積み上げ
- 中小企業や非正規労働者は、税と社会保険の負担にあえぐ
この政策パッケージが守ったのは、大企業の利益構造と、それに依存する政官財の利権ネットワークでした。
2. 医師会と政治の癒着 ― 医療の地域格差を生む構造
日本医師会は長年にわたり、自民党への強力な支持母体となってきました。その代わりに守られてきたのは、
- 医学部の定員制限(医師不足の温床)
- 医療機関の過密・過疎の固定化
- 地域医療の空洞化
これは地方の住民にとって「救急車を呼んでも医師がいない」現実をもたらしました。
3. 農業利権と補助金行政
農協(JA)をはじめとする農業関連団体が、補助金と票を通じて政治に強い影響力を持っています。
そのために何が起きたか?
- 効率の悪い農地が維持され、若者の就農参入は困難
- 大規模化・合理化が進まず、競争力が低下
- 食料自給率は上がらず、補助金ばかりが増える
これは「農業を守っている」のではなく、農業利権を守ることで“農業を衰退させている”政策です。
◆ なぜ政治は既得権益を壊せないのか?
● 選挙制度と組織票の依存
現在の小選挙区制では、支持団体の「まとまった票」が議席を左右します。
企業団体・労働組合・業界団体からの支持がなければ、多くの候補者は当選できません。
つまり、当選するために「既得権」を守ることが前提条件になってしまっているのです。
● 官僚との持ちつ持たれつの関係
政治家は法律を作っても、具体的な制度設計や執行は官僚に依存しています。
そのため、官僚の既得権に逆らうと、
- 情報がもらえない
- 法案を骨抜きにされる
- 自身の政策が潰される
といった「報復」が行われる構造があります。
◆ 既得権政治が生んだ国民生活の犠牲
- 非正規雇用の増加と低所得の固定化
- 結婚・出産を諦める若者の増加(少子化加速)
- 地方の過疎とインフラ崩壊
- 教育・医療の格差拡大
- 「働いても報われない」社会の蔓延
これが「国民を見ない政治」の末路であり、国の将来そのものを蝕んでいます。
◆ 今、私たちにできること
政治家の言葉よりも、「誰を利する政策なのか?」を見極める力が問われています。
- 組織票に頼らない政治家を応援する
- 特定の団体に甘すぎる政治家を監視する
- 政策の中身を調べて投票に行く
「改革派」を自称するだけのパフォーマンスではなく、本当に利権構造を壊す意志と実行力のある人物を見極めることが、これからの日本の再生のカギです。
◆ 結びに:国民の暮らしを守る政治へ転換できるか
既得権を守る政治は、短期的には安定します。しかし、そのツケはすべて国民が払うことになる――。
これまでの30年の失敗が、その証明です。
今こそ、日本の政治は「誰のための政治なのか」を根本から問い直すときに来ています。