「#〇〇に投票してはいけない」「陰謀論政党」「デマばかり拡散している」──選挙のたびに飛び交うネガティブキャンペーン。しかし、近年ではその“批判”がむしろ対象の政党や候補者にとって追い風となるケースが増えています。今回は、「炎上」や「叩き」がなぜか支持を広げる現象について、実際の政治事例を交えながら詳しく解説します。


1. ネガティブキャンペーンとは?

ネガティブキャンペーンとは、特定の政党や候補者の問題点やスキャンダルをあえて強調し、有権者の印象を悪化させる選挙戦術です。
しかし、SNS全盛の時代においては「攻撃=認知拡大」になるケースも少なくありません。


2. 逆効果になる3つの要因

① 共感の引き金:「なぜそこまで叩かれるのか?」

一方的な批判やレッテル貼りは、見る人に「そこまで叩く理由は何?」という疑問を生みます。そして調べ始めた結果、「実はまともな主張をしているのでは?」という再評価につながることがあります。

② 被害者ポジションで支持を集める

激しい攻撃を受けた側が「言論封殺だ」「異端扱いされているが正しいことを言っている」と訴えることで、逆に“弱者”としての同情や応援が集まる構造です。

③ 拡散=広告効果

ネガティブな投稿でも“名前”が拡散されることで、知名度が高まり、調べる人が増え、潜在的支持層の掘り起こしにつながります。


3. 実例①:「#参政党に投票してはいけない」タグの拡散

2025年の参議院選挙前に突如SNS上で急拡散されたハッシュタグ「#参政党に投票してはいけない」。
このタグは元々、批判的立場からの呼びかけとして使われていましたが、結果的に参政党に注目が集まり、街頭演説の参加者数が急増。

具体例:
東京・新宿駅前で行われた演説では、前回より2倍近い人が集まり、Xでは「叩かれてるから気になってきた」「逆に信頼できる」といった投稿が増加。タグを見て党のYouTubeに流入するユーザーも急増し、動画再生数が一時的に10倍近くに跳ね上がった。


4. 実例②:山本太郎と「れいわは危険」の拡散

れいわ新選組の山本太郎代表も、過去には「極端」「過激」などのネガティブなレッテルを貼られてきました。しかし、その批判報道が話題を呼び、SNSでは「それだけ嫌われるってことは何か言ってることが本質を突いてるのでは?」と興味を持つ人が続出。

具体例:
2022年参院選の直前、「れいわの候補者は極端すぎる」という記事がバズると、それに対抗する形で「れいわの政策を読んでみたら意外とまともだった」という投稿が拡散。結果的に、当初の予想を上回る得票を獲得。


5. 実例③:トランプ大統領の「炎上芸」

アメリカのドナルド・トランプ前大統領も、最も有名な“炎上を武器にする政治家”の一人です。メディアからの連日のバッシングやTwitterでの過激発言が絶えない中で、逆に熱狂的支持を得るという現象が起きました。

具体例:
「女性蔑視発言」「人種差別的表現」などで多くのメディアがトランプ批判を展開したが、地方の白人労働者層を中心に「自分たちの言いたいことを代弁してくれる」と支持を集め、2016年の大統領選でまさかの勝利。


6. ネット時代の“バズ政治”とは?

SNSでは、どれだけ「燃える(炎上する)」かが可視化されます。そして、それは“注目度”であり、選挙ではそれが“票”に変わる可能性があるのです。

  • 炎上 → 話題になる
  • 話題になる → 調べられる
  • 調べられる → 一部が共感する
  • 共感する → 支持に変わる

このサイクルは、ネガティブキャンペーンであっても機能してしまうのが現代の政治空間です。


7. メディアリテラシーが鍵を握る

このような構造があるからこそ、有権者は単に「叩かれている」ことを鵜呑みにせず、自ら情報を調べ、裏を取る姿勢が求められます。
逆に言えば、批判されること自体が信頼を示す「勲章」のように機能してしまうことすらあるのです。


結論:「炎上」は終わりではなく、始まりである

かつては致命傷になり得たネガティブキャンペーンや炎上。しかし今やそれは、注目を集め、知名度を上げ、潜在的支持を掘り起こす“戦略”にもなりうる時代です。
批判は必ずしも失点ではなく、むしろ“発信力”と“拡散力”を持った証明──そんな新しい選挙戦の現実が、目の前で展開されています。

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