■ 自民党派閥の解消という歴史的転換

2024年、政界を揺るがす出来事が起きました。長らく日本政治に影響を及ぼしてきた自民党内の「派閥」が事実上、解消されたのです。安倍派(清和政策研究会)をはじめとする主要派閥が、裏金問題や世論の批判を受けて縮小・分裂し、党内における政策調整機能が弱体化。この出来事は一時的な混乱を招いたものの、結果として「派閥が担っていた政策の多様性や代弁者機能」を外部政党が補うという新たな構造を生む契機となりました。

■ 派閥が果たしていた「政策補完機能」とは?

従来の自民党は、派閥ごとに経済、外交、安全保障、教育、福祉など、政策の細分化と論点整理を行う役割を担ってきました。派閥間でのバランスをとりつつ、党全体としての「幅」を確保していたのです。しかし派閥解消により、この多様性が一時的に失われました。これにより、「自民党一本では吸収しきれない政策的ニーズ」が生じ、それに応える勢力が求められるようになったのです。

■ 政策補完勢力として台頭した国民民主党と参政党

この真空地帯を埋める形で台頭したのが、国民民主党参政党です。

  • 国民民主党は、労働者保護や経済政策において「現実主義的改革路線」を掲げ、かつての宏池会的な穏健保守の立場を代弁。連合との連携を軸に、中間層や地域経済を重視する政策を打ち出し、自民党支持層の一部も取り込みました。
  • 参政党は、教育・安全保障・食の安全など国民生活に直結した分野で保守色を強め、「国を守る」「伝統を重んじる」視点を前面に出しました。これまで自民党右派が担っていた役割を補完し、若年層や子育て世代からの支持を伸ばしています。

■ 参議院選挙で見えた「新たな補完勢力」の影響力

2025年夏の参議院選挙では、この「補完勢力」としての役割が顕著に現れました。

  • 国民民主党は都市部の無党派層を中心に得票を伸ばし、改選議席を大きく上回る成果を上げました。労働組合系有権者に加え、政策論争を求める保守層からも支持を獲得しました。
  • 参政党は比例票で健闘し、自衛官OBや地方の農業団体など、これまで自民党右派が主に支えていた層を取り込みました。特に若者層の間で「政治に希望を持てる政党」として話題になりました。

このように、両党は「反自民」ではなく「政策を補完する新勢力」として認識され、結果的に自民党政権の安定を支える一翼を担う形になっています。

■ 今後の政局へのインパクト

このような構造の変化は、今後の政界再編の呼び水にもなり得ます。

  • 自民党は党内における調整力の代替を外部に頼らざるを得ず、国民民主や参政党との協調が不可欠になります。
  • 一方で両党も「補完勢力」にとどまらず、独自の路線を強化し「中道保守連合」や「第二自民党」としての成長を目指す可能性が高まっています。
  • 政策論争の場が広がることにより、有権者にとっては選択肢の多様化というメリットも生まれています。

■ 結語:派閥なき時代の政治を支える「機能の分散化」

自民党の派閥が果たしていた機能は、消滅することなく、新たな形で再構成されています。派閥に代わる「外部の補完勢力」が健全に育っていけば、むしろ日本政治のバランスと透明性は高まるとも言えるでしょう。

国民民主党と参政党の躍進は、単なるブームではありません。派閥なき時代の自民党を補完しつつ、政策論争を活性化させる「制度外の派閥」として、新たな政治のステージを切り開きつつあります。

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