近年、「日本人の京都離れ」が顕著になっています。京都といえば日本を代表する観光地であり、修学旅行や家族旅行の定番でした。しかし、外国人観光客の急増によって街全体が観光地化し、日本人が足を運びにくい状況が生まれています。今回は、観光公害の実態と、その結果として地方観光地の人気が高まる背景を詳しく解説します。


1. 外国人観光客による観光公害の実態

京都市内では、観光客が増えすぎたことによる「観光公害(オーバーツーリズム)」が深刻化しています。

(1) 祇園の舞妓撮影問題

花見小路周辺では、舞妓さんを無断で追いかけ回して撮影したり、プライベートな通路に侵入したりするトラブルが頻発。これを受け、2024年には祇園の一部地域で「無断撮影禁止区域」が設定されました。地元住民からは「日常生活が侵害されている」との声が上がっています。

(2) 伏見稲荷大社の混雑

インバウンド観光客に人気の伏見稲荷大社は、早朝でも外国人観光客でごった返しています。「千本鳥居」をゆっくり歩ける時間帯はほとんどなく、日本人観光客からは「静かに参拝できない」と不満が噴出しています。

(3) 宿泊・飲食業の価格高騰

外国人観光客の消費力に合わせて、ホテル料金や飲食店の価格も上昇。2024年秋には、京都市内の中級ホテルが1泊2〜3万円に跳ね上がり、国内旅行客にとっては割高感が強まっています。


2. 日本人が京都を避ける心理

こうした状況を受けて、日本人の多くは「わざわざ混雑に飛び込んでまで京都に行く必要はない」と考えるようになっています。特に以下のような心理が働いています:

  • 「落ち着いた旅行をしたい」:混雑と騒音でリラックスできない京都を避け、静かな地方へ。
  • 「費用対効果が低い」:ホテルや食事の価格が高騰し、コストに見合わないと感じる。
  • 「地元住民との摩擦が心配」:観光公害が深刻化する中、現地で気まずい思いをしたくない。

3. 人気上昇する地方観光地の例

京都離れが進む一方、日本人観光客は地方の「穴場観光地」に流れています。

  • 金沢(石川県):兼六園やひがし茶屋街など、古都の情緒がありながら京都ほど混雑していない。
  • 飛騨高山(岐阜県):小京都と呼ばれる街並みが魅力で、静かな雰囲気が人気。
  • 長野・松本:自然と歴史が融合し、外国人観光客が少なく落ち着いた観光が可能。
  • 和歌山・南紀白浜:温泉や海が楽しめるリゾート地として、国内客中心の人気が高まっている。

特に2023〜2024年の旅行調査では、京都や大阪の宿泊数が横ばい〜微減する一方、金沢や飛騨高山の宿泊者数が増加しているというデータも報告されています。


4. 京都観光は今後どうなる?

京都市は観光公害対策として、

  • 観光地でのマナー啓発
  • 早朝・夜間の観光プランの推奨
  • 観光税の徴収
    などを進めていますが、根本的な混雑緩和には時間がかかる見通しです。

そのため、日本人観光客にとって京都は「再び行きたい街」から「行きたいけど避けたい街」へと位置づけが変わりつつあります。今後もインバウンド需要が続く限り、日本人の京都離れは一時的な現象ではなく、旅行トレンドの構造的変化として定着していくでしょう。


結論:観光地の分散がカギ

京都が抱える問題は、観光立国を掲げる日本全体の課題でもあります。観光客が一部の都市に集中せず、地方に分散することで「静けさを求める日本人旅行者」と「異文化体験を求める外国人観光客」の双方が満足できる環境づくりが必要です。

京都離れは、単なる敬遠ではなく、日本の観光のあり方を見直す契機になっているのです。

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