ここ数年、日本の夏は「災害級の暑さ」と言われるレベルが常態化しています。気象庁が「命の危険がある」と警告を出しているにもかかわらず、多くの企業や組織では「出勤は当たり前」という風潮が残り続けています。その結果、体調を崩す人や最悪の場合命を落とす人が出てからようやく問題が表面化するという、あまりにも遅い対応が繰り返されています。
◆「不要不急の外出は避けて」と言いながら「出勤はして」
気象庁や自治体は、災害級の暑さが予想される際に「不要不急の外出を控えて」と呼びかけます。しかし、多くのサラリーマンやパート・アルバイトにとって出勤は「不要不急」には該当しないとされ、現実的には猛暑の中を通勤するしかない状況が続いています。
具体例
- 東京都内の会社員(30代男性)
最高気温39℃の日、満員電車に乗り込むだけで汗だくになり、駅から職場まで歩いた時点で「頭がクラクラして仕事にならない」と訴えるも、休憩を認めてもらえず、結果的に熱中症で救急搬送された事例。 - 愛知県の工場勤務(40代女性)
猛暑日の作業中に「気分が悪い」と訴えたが、「人手不足だから」とそのまま作業を続行させられ、意識を失って倒れた後でようやく搬送。幸い命は取り留めたが、復帰には数週間を要した。
◆「犠牲者が出てから」しか変わらない現実
これまでにも、通勤や業務中の熱中症で亡くなるケースが報道されるたび、企業や社会全体で「働き方の見直し」が叫ばれてきました。しかし実態としては、一時的に注意喚起がされるだけで、抜本的な解決策が取られないまま再び暑い夏が訪れています。
実際に起きたケース
- 2023年、東京都内の建設現場
連日の猛暑で現場作業員が熱中症で倒れ、その後死亡。死亡後にようやく「休憩時間の追加」「作業時間短縮」が実施された。 - 2022年、配送業ドライバー
猛暑の中での荷物配達中に意識を失い死亡。会社は「注意喚起はしていた」とコメントしたが、個人任せの熱中症対策では限界があることが露呈した。
◆「命より出勤」が優先される理由
なぜ「災害級の暑さ」と警告されていても出勤が当たり前とされるのでしょうか?
- 日本社会の**「出勤してこそ仕事」**という根強い価値観
- テレワーク制度が一部の大企業にしか浸透していない現実
- シフト制や対面業務が中心の職場では「休めば他の人に迷惑がかかる」と思わせる空気
- 「熱中症で休むのは自己管理不足」とする古い考え方
これらの要素が複合的に絡み合い、命よりも出勤が優先される異常な状況が続いているのです。
◆今こそ必要な「命を守るための仕組み」
犠牲者が出てからでは遅すぎます。必要なのは、
- 災害級の暑さの日は原則テレワーク
- 対面業務は時短勤務・臨時休業を検討
- 労働基準法に基づく熱中症防止義務の徹底
- 企業に対する罰則や指導の強化
これらを制度として整備することが、「命を守る社会」に変える第一歩ではないでしょうか。
まとめ
「不要不急の外出は避けて」と言いながら、出勤だけは例外視される。そんな矛盾を放置し続ける限り、また犠牲者が出てから騒ぎ出す、同じ過ちを繰り返すでしょう。
命あっての経済活動であることを忘れず、災害級の暑さの時には「働き方そのもの」を根本から見直す必要があるのです。