◾️ 太陽光パネルと温暖化の矛盾

再生可能エネルギーの代表格である太陽光発電は、脱炭素社会の切り札として期待されています。しかし一方で、太陽光パネルの設置が周辺の気温を上昇させる「ソーラー・ヒートアイランド効果」が指摘されています。
2016年に米国アリゾナ州で行われた研究では、太陽光発電施設の周辺では夜間気温が他の地域よりも3〜4℃高いことが確認されました。この現象は、パネルが日中に吸収した熱を夜間に放射し続けるために発生するものです。


◾️ アリゾナ州での研究結果

アリゾナ州立大学の研究チームは、砂漠地帯に設置された大規模太陽光発電施設で気温を測定した結果、以下のような事実を報告しました。

  • 夜間気温が周辺地域より3〜4℃高い
  • 日中はパネルが太陽光を吸収するため、一時的に表面温度が70℃以上になる
  • 吸収された熱が夜間に放射され、周辺の大気を加熱することでヒートアイランド現象が悪化

この結果、エネルギー供給のために導入した設備が局所的な温暖化要因になり得ることが明らかになったのです。


◾️ 日本でのリスク:森林伐採型メガソーラーの問題

日本では特に、山間部や森林地帯の伐採による太陽光パネル設置が問題視されています。森林伐採によって発生するリスクは次の通りです。

  1. ヒートアイランド現象の加速
    森林は日射を遮り、気温を下げる役割を持っていますが、伐採されるとその効果が失われ、周辺地域の気温上昇を招きます。
    例:静岡県熱海市では山林を削ったメガソーラー設置後、夏季の最高気温が周辺市街地より高い日が増加したとの報告もあります。
  2. 土砂災害・洪水リスクの増大
    森林伐採によって地表の保水力が低下し、集中豪雨時に土砂災害が起きやすくなる危険性があります。2021年の熱海土石流でも、上流部の太陽光施設周辺の森林伐採が一因として議論されました。
  3. 生態系への影響
    森林伐採は、野生動物の生息域喪失を引き起こし、生物多様性の減少にもつながります。

◾️ ソーラー・ヒートアイランド効果のメカニズム

太陽光パネルは黒色に近い表面を持つため、日射を効率よく吸収し、発電しない熱エネルギーは蓄積される性質があります。
夜間になると、パネルや地面に蓄えられた熱が赤外線として放出され、周囲の空気を暖めます。これは都市部のアスファルトやコンクリートが夜間も熱を放射する都市型ヒートアイランド現象と同じ仕組みです。


◾️ 解決策や緩和策

太陽光発電の普及を進める一方で、以下の対策が必要です:

  • 森林を伐採せず、屋根や既存の人工構造物上への設置を優先
  • パネル周囲に緑地帯を設けることで熱放射を緩和
  • 反射率の高い新型パネルや熱を吸収しにくい素材の採用
  • 地域の温度データを用いた設置前の環境影響評価の義務化

◾️ まとめ

太陽光発電はCO₂削減に貢献する一方で、ソーラー・ヒートアイランド効果や森林伐採による環境破壊という新たな課題を抱えています。
アリゾナ州の研究や日本の事例は、「再生可能エネルギーの導入=環境保護」とは限らないことを示しており、適切な設置場所の選定や緩和策の実施が不可欠です。

これからのエネルギー政策は、環境負荷を最小限に抑える設計と地域住民との合意形成を前提に進める必要があります。

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