収入安定化か、それともモチベーション低下か?
ソニーの新しい報酬制度とは
ソニーグループは2025年度から「冬の賞与」を廃止し、その分を給与に組み込む制度を導入すると発表しました。対象となるのは約1万5000人の従業員で、月給は最大22%引き上げられる見通しです。
この変更により、従業員は「毎月安定した収入」を得られるようになり、ライフプランの見通しが立てやすくなるとされています。
メリット:収入の安定と企業戦略
今回の制度変更にはいくつかのメリットがあります。
- 収入の安定化
これまで賞与は業績や評価に左右されてきましたが、給与に組み込まれることで「毎月の固定収入」が増加。住宅ローンや教育費などの計画が立てやすくなります。 - 人材確保
外資系企業やスタートアップとの人材獲得競争が激しくなる中、安定した給与体系は人材の流出防止につながります。 - 社会保険料の軽減効果
賞与からは社会保険料が天引きされますが、給与に組み込むことで「賞与としての負担」が減少。会社側にも一定のコスト削減効果があります。
デメリット:モチベーションや貯蓄計画の難しさ
一方で、見逃せないデメリットも存在します。
- ボーナスによる達成感の喪失
多くの社員にとって、賞与は「頑張りが評価されたご褒美」。それが消えることで「やりがい」や「節目の達成感」が失われる懸念があります。
例:これまで「冬のボーナスで家族旅行」や「車の買い替え」を計画していた社員が、まとまった資金を得にくくなる。 - 貯蓄計画の困難
ボーナスを貯金に回していた人にとっては、毎月の給与に分散されると「気づかないうちに使ってしまう」リスクが高まります。 - 成果主義との矛盾
ソニーのようにグローバルに展開する企業では「成果に応じた報酬」が重視されますが、ボーナス廃止はその仕組みを弱める可能性があります。
他社への波及効果
ソニーのような大手企業が制度を大きく変えると、他社にも影響が及ぶ可能性があります。
- トヨタや日立といった大手メーカーも「給与の固定化」を検討するきっかけになり得る。
- 若年層の採用競争が激化する中、「安定収入」を武器にできる企業が増えるかもしれません。
- 一方で、中小企業では「賞与文化」を維持し、社員のモチベーション維持を重視する選択も残るでしょう。
まとめ:安定とやりがいのバランスが問われる
ソニーの「冬の賞与廃止・給与組み込み」は、日本企業の報酬制度に大きな一石を投じます。
- 生活の安定化を重視するか
- モチベーションを高める仕組みを残すか
このバランスをどう取るかは、今後の企業経営にとって避けて通れない課題となるでしょう。